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免税事業者に「益税」あるのか? 詐欺的なインボイス導入理由 「預かり金」ではなく「対価の一部」

鉄工所で働く一人親方もインボイス制度の対象となる

 自民党政府が2023年10月から導入しようとしている「インボイス制度」(事業者が仕入れ等のさいに取引先から適格請求書を受けとらないと仕入税額控除が受けとれず、消費税の納税額が増す制度)について、政府与党は年間売上1000万円以下の免税事業者が消費者や取引先から消費税分のお金を受けとりながら納税義務がないことを「益税」としてやり玉の対象にあげ、これを是正するためのインボイス制度であると説明している。実際に「益税」なるものが存在するのか? について見てみた。

 

 インボイスを推進する政府側の主張については、「維新の会」の生みの親である橋下徹元大阪市長が、衆院選の開票日(10月31日)のテレビ特番で、同制度に反対するれいわ新選組代表の山本太郎(現衆議院議員)に対して放った言葉が代弁している。

 

 橋下徹は「事業者の皆さんは本来納税しなきゃいけないのに、いま実質(年間売上)1000万(円以下)の方々は免税となっている。消費者、サラリーマンの方は源泉徴収で一銭たりとも税金をもらすことは許されない。そういうサラリーマンの方々が事業者に預けている消費税をインボイス制度で納税するのは当たり前」「税金の不公正を正すのが政治の役割だ。預かっている税金をある意味ポケットに入れてもいい、一生懸命インボイス廃止だなんていうことは、多くのサラリーマン、納税者をバカにしている」などと批判した。

 

 これに対して山本太郎は、「間違った誘導はやめるべきだ。年間売上1000万円以下というのは小規模事業者、零細企業だ。フリーランス、一人親方の人々だ。500万免税事業者の方々が、自分たちの生活を圧迫しながら生きているなかで、そこに消費税まで乗せたらどうなるのか」「(売上)1000万未満の方々に消費税を乗せたら、価格として消費税を乗せられない人もいっぱいいる。小規模の事業者たちは自分たちで背負っている」と返した。

 

 橋下の主張は、政府が「複数税率制度の下で適正な課税を確保するための仕組み」とするインボイスの導入理由を具体的に説明したものだ。

 だが、免税事業者が受けとっている消費税分は、本当に消費者からの「預かり金」なのか?

 

 年間売上1000万円以下の中小零細事業者に対する免税措置は、消費税を導入するさい、国が中小零細事業者の反発を抑えるためにもうけた「事業者免税点制度」によるもので、国税庁は「小規模事業者の納税事務負担等に配慮」したものと規定している。

 

 かつてこれを「免税事業者によるピンハネ」などとして起こされた裁判で、東京地裁は「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」とし、「事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」との判決(1990年3月26日・確定)を下している。

 

 そもそも消費税は、たばこ税や酒税等と同じく、消費者は納税義務者ではなく、事業者も徴収義務者ではない。納税義務者は事業者であり、「間接税」という建前とは裏腹に、実質は事業者に対する直接税という性質のものだ。そのため国税庁自身も「法的な観点からは、消費者からの預かり金というような性格を有しているものではなく、その実質は、単なる商品・役務の対価の一部であるというべき」との見解を示している。

 

 ところが、実際に取引や事業をおこなうときには、売上や経費、最終損益自体もすべて税込み額でなければならず、それをベースにして法人税や所得税等の課税額が計算される。国の指導にもとづき、免税事業者であっても課税取引である以上、取引価格(商品やサービスの対価)のうちの10%は否応なく「消費税」として表記することが求められる。対価に消費税を上乗せして請求しているのではなく、対価の一部が帳簿上、消費税分として計算されているだけに過ぎないのだ。

 

 「預かり金」でもなく、会計上、対価の一部を「消費税分」として処理することが求められるために生まれる誤解を既成事実化し、「益税」などといってインボイス導入の理由にしていること自体が詐欺的といえる。政府がインボイスについての公式な答弁書で「益税」などとはいわず「適正な課税を確保するため」としかいわないのはそのためだ。

 

 取引価格はあくまで需要と供給、取引先との力関係で決まるものであり、価格決定権を持たない多くの中小零細事業者は、どれだけ消費税が上がっても消費税分を価格転嫁(値上げ)できない。2019年に中小企業家同友会が実施したアンケート調査では、3400社のうち半数超が消費税増税分を価格に「上乗せできない」と答えている。免税事業者であっても材料や設備などの仕入れでは消費税分も支払っており、売上からは消費税納税義務はないものの仕入税額控除もなく、仕入額が売上を上回った場合の還付も受けられないため、消費税が上がるたびに身を削りながら商売をしているのが実態なのだ。

 

 さらに消費税は実質上、事業者の付加価値(社会保険料を含む人件費+利益)に対してかかってくる税であるため、多くの業者が人件費を抑制するために労働者を直接雇用せず、仕入れと同じく税額控除が受けられる外注(一人親方やフリーランス、派遣業者への委託)にすることで利益を確保しようとする。それを促すために政治主導による「働き方改革」や派遣法の緩和がおこなわれ、より低賃金で社会保障の薄い労働形態が増えてきたにもかかわらず、そこからさらに搾り取るというのがインボイス制度にほかならない。

 

国税滞納の4割占める消費税 廃止こそが解決策

 

 インボイス制度導入後は、事業者間で取引する場合、税務署に申請して取得する登録番号付きの「適格請求書(インボイス)」が発行されなければ、取引企業はこれまでのように消費税の仕入税額控除を受けられなくなるため、免税事業者との取引を続けることは負担が増す。

 

 適格請求書は課税事業者しか発行できないため、建設業や鉄工所などの一人親方、近年増加したフリーランスなど年間売上1000万円以下の免税事業者は、課税業者となって消費税を納めるか、あるいは商品やサービスの価格を消費税分下げなければ取引ができなくなる可能性が強まる。それは経済的にも事務的にも膨大な負担を強いることになるのは必至で、全国的に中小零細事業者を淘汰する政策以外の何物でもない。

 

 消費税は課税業者にとっても重いものとなっている。税滞納のなかで消費税は最優先で徴収されるものであるにもかかわらず、国税庁が発表した2020年度末の国税滞納残高(8286億円)のうち4割が消費税の滞納(3245億円)となっている。そのこと自体、税制としての破たんを物語っている。

 

 さらに消費税の滞納残高には年率8・9%の延滞税が課され、雪だるま式に借金が増えていく仕組みであり、これらの税滞納があると銀行からの融資も受けづらくなる。そのため、事業が黒字でも消費税が払えないために倒産するといったケースが後を絶たない。

 

 輸出に頼る大企業は膨大な消費税の還付を受けられるが、あいつぐ消費税の増税で国内消費は落ち込み、売上も所得も減り、25年間のデフレ不況が続く元凶となってきた。日本社会の屋台骨を支えてきた中小零細を軒並み淘汰するインボイスを含む消費税そのものを廃止することこそが唯一の解決策といえる。

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