いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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戦争動員のファシズム運動 拉致事件大騒ぎするメディア  国交正常化の世論強化を

 「北朝鮮の拉致問題」が日本を戦争に動員するファシズム運動の様相を強めている。家族会の要求として経済制裁を求める署名運動を展開、この被害者家族の要求に逆らうものは、国会やマスメディアなどを総動員して国賊であるかのように有無をいわせぬ体勢をつくり、そして戦時国家づくりをしゃにむにすすめている。いきなり拉致した北朝鮮国家当局の行為が許しがたい犯罪であることは明らかである。しかしながら、それを戦争に訴える理由にするのは度外れたことである。かつての敗戦につながる中国への侵略戦争も、「横暴なシナを懲らしめる」であった。イラクでも米英占領軍の下請になりながら「人道支援に行く」といい、攻撃されたら人殺しをやるという論理である。この拉致問題について、日本人民の根本的利益の問題として、はっきりさせることが重要である。

  制裁かかげ署名展開 拉致議連や救う会
 拉致被害者家族の悲しみと怒りは当然のことである。多くの人人がその悲しみと怒りを共有することも当然のことである。しかしながらこれを、経済封鎖なる兵糧攻めをし、いわんや戦争によって懲らしめようというのはまったく別の問題である。拉致被害があったから、戦争によって日本人も朝鮮人もおびただしいものが殺しあえというのは、拉致犯罪とは比較にならない大犯罪である。これは拉致被害者救出のためではなく、拉致問題を利用するものであり、その家族をもっと苦しめる結果になるのは明らかである。
 防衛庁長官で「気持ちの悪い戦争オタク」との評判がある石破茂(前拉致議連会長)などが率いてきた「拉致議連」(平沼赳夫会長)や元「日共」党員であった佐藤勝巳の率いる「救う会」が主導する「拉致被害者救出」をかかげる運動は、小泉政府が万景峰号の入港を阻止し、イラク特措法を成立させた昨年七月ごろから段階を画した。九七年から開始してきた「被害者救出を求める署名」を七月から変更し「拉致はテロだ! 今こそ経済制裁を!」という署名を開始した。
 署名は総理大臣あてで「日本政府はいまこそ〝拉致した日本人とその家族を全員帰せ。帰さないならば経済制裁だ〟という毅然とした意思表示をすべき」と主張。家族会を前面に出して「愛する肉親が現在も囚われたままである家族会の立場からすると、この要求はまさに血の叫びであり、これ以外に解決策はない」とのべ、「経済制裁とは北朝鮮船舶の入港禁止、対北貿易・送金停止などであり」「国際社会が北朝鮮の核武装を断固として阻止しようと包囲網をしく今こそ日本政府が経済制裁という圧力を用いて拉致解決を迫ってほしい」という内容。それは小泉政府の戦時国家体制づくりを後押しするものであった。
 昨年8月に万景峰号が入港し、「ミサイル部品輸出」「麻薬取引」「不正送金」「工作員への指示」に使われたとして新潟県警など2000人にのぼる過去最大動員で監視したとき、「拉致議連」や「救う会」は新潟県の港で「出て行け」と抗議行動をした。
 
 戦争愛好の国会議員が扇動
 10月には救う会が主催し東京で「同胞を奪還するぞ! 全都決起集会」を開催。石原慎太郎や佐藤勝巳らが登壇し「経済制裁による同胞の早期帰国」を訴えた。12月にも拉致議連を中心に「拉致はテロだ! 経済制裁法案成立を求める緊急国民集会」を開き、安倍晋三、鳩山由紀夫などが出席し激励している。
 昨年末に朝鮮側は平壌空港まで本人が出迎えることを条件に家族の帰国を提案。被害者家族も「迎えに行きたい」と要望が出ていた。しかし「信用できない。非公式ルートの交渉にはいっさい賛同できない」(家族会・蓮池透)、「北朝鮮がエサをまいただけで信用できない。揺さぶりだ」(救う会・佐藤勝巳)といって押さえこんだ。
 さらに今年に入ると、1月20日に開かれた拉致議連総会で、被害者の平壌空港出迎えについて「容認できない」との声明を採択。総会では国会に「拉致問題特別委員会」の設置を求めること、北朝鮮への経済制裁を可能にする外為法改正案、在日朝鮮人を対象にした再入国禁止法案の今国会成立をめざすことを確認した。
 「救う会」も1月25日に全国幹事会を開き運動方針を決定。経済制裁法案成立と拉致問題特別委設置を求める「100万人署名」を3月末までに集め、4月に東京都内でデモをすると決めた。こうしたなかで家族会も2月2日、テロ支援国リストに拉致を明記するよう要求した。
 そして2月9日に小泉政府が経済制裁を可能にする「改正外為法」の成立を強行すると「救う会」や家族会が拉致問題解決にむけ積極活用するよう政府に要求する声明を発表。船舶入港禁止法案成立も訴えた。

  戦争あおる小泉政府 軍事包囲網を強化
 この拉致問題をテコにして、小泉政府はアメリカの要求のままに戦時国家体制づくりをすすめた。有事関連三法をつくり、戦域ミサイル防衛(TMD)システムの配備を計画し、朝鮮のミサイル体勢を無力化し、さらに朝鮮がミサイル発射の兆候を見せれば先制攻撃することも公言。
 とくに防衛庁は、米英のイラク攻撃直後、「対米支援」と連動して北朝鮮への警戒・監視を強化。直径1600㌔の空域が監視可能な航空自衛隊の空中警戒管制機E767(AWACS)で日本海上空を監視したり、「不審船対策」でつくった高速ミサイル艇2隻を佐世保基地に配備するなど東シナ海全域をカバーする態勢を整えた。
 さらに日本初の軍事偵察衛星を「北朝鮮の弾道ミサイルの発射や核開発の監視をおこなうのが目的」と公言して鹿児島から打ち上げた。そして今国会では朝鮮への経済制裁を可能にする法律を整備し、臨検で朝鮮の船を撃沈できる有事法も急いでいる。
 拉致事件は北朝鮮の国家当局の犯罪である。これは米朝間の朝鮮戦争以来の交戦状態の継続、日朝間のかつての侵略と戦争状態の継続というなかで起きた不幸な事件である。アメリカ側は戦後、日本や「韓国」に核武装をした軍隊を配備し、偵察機を飛ばして監視し、核攻撃をできる態勢をとってきた。朝鮮側はこの攻撃態勢と対峙してきた関係にある。
 日米の側が、衛星や偵察機などで高度なスパイをするなら、北朝鮮は「不審船」のような古めかしいスパイ作戦をするという関係である。日米の側が航空機や、軍艦、潜水艦、地上からミサイル攻撃の圧倒的な包囲態勢をとれば、北朝鮮側はわずかなテポドンなどで対抗するという関係である。
 したがって、拉致被害のようなものが今後起きないようにするには、北朝鮮側がこのようなことをしないことが直接の問題であるが、より根本的にはアメリカが日本を従属させて実行している北朝鮮への戦争体勢をやめることである。それは戦後からつづく交戦状態を解決し、平等互恵の立場で国交を正常化すること以外にない。ところが政府やマスコミはあげて、拉致被害がけしからんので戦争による殺しあいという度外れた被害をつくるために利用しているのである。

  正しい解決を切望 日本どうするかの問題
 今回の拉致が許しがたいという立場は、かつての日本側がやった何百万人という朝鮮人拉致も許しがたいというのでなければつじつまがあわない。日本側がやったかつての犯罪には口を閉ざして、相手側の犯罪だけは許さないというのでは、また逆に、拉致被害は許せないから兵糧攻めと戦争で何百万人を苦しめるというのでは、正義を貫く民族とはいえない。それは朝鮮だけでなく世界各国との関係でも信頼を得ることができず、世界から侮蔑され孤立する道であることは明らかである。
 イラクにたいしてフセイン政府時期には非人道の経済制裁をして、米英軍占領になったら「人道支援」といって自衛隊を派遣した政府が、物資不足にあえぐ北朝鮮に兵糧攻めという非人道的なことをする。イラクへの人道とはインチキであり、石油泥棒の手伝いというのが真実である。ちなみに日本国民も、賃金も年金も削られ、税金がふえ、さまざまな自己負担はふえて、まるで兵糧攻めにあい人道も人情もないという実感が圧倒的である。
 拉致問題の騒動は、拉致被害者の家族をもてあそび、戦争放火者側から利用するものである。戦争愛好の国会議員が旗を振り、マスメディアが大騒ぎをし、その背後でアメリカの顔色をうかがう支配勢力が仕組むものであり、家族をはじめ人人の要求という形で、ものをいわせず戦争に動員するファシズム運動である。
 かつての戦争が、支配階級がマスコミから教育から支配して、好戦的イデオロギーをあおりながら、国民の要求で戦争にすすんだようにいい、戦後は一億総ザンゲを唱え、近年でも加害責任論で押さえつけて支配階級の犯罪を回避してきた、拉致問題の騒動はそのくり返しである。
 小泉という首相が平壌まで行って、共同宣言までかわし、国交正常化を約束しながら、アメリカが核問題を騒ぐと、マスメディアが拉致問題の大騒動をくり広げ、政府も外務省もうなだれて約束をホゴにし、国際的信用をなくしてきた。かつての日本の支配勢力が、朝鮮、中国、アジアへの侵略をし、甚大な被害を与えた、それらの国国にたいして、今度はアメリカの下請となってもう一度侵略と戦争を仕組むというのは、世界にたいして民族としての愚かさを証明することである。日本の経済発展にとっても、アジアとの平和的な貿易、平和、友好関係は不可欠の重要な問題である。
 拉致問題への対応は、北朝鮮に対してどうするかの問題より、日本がどんな国になるかの問題である。戦争と反動、貧困の売国の道ではなく、平和で豊かな独立した日本を建設する、日本人民の根本的利益がかかる問題として、正当な世論を勝利させることが求められている。目先の怒りや悲しみをこえて、その背景にある歴史的社会的な原因を明確にして、正しい問題の解決を要求する人民世論を強めることが切望されている。
 拉致問題の解決もふくめて、アメリカの干渉を排して、日朝の戦争状態の終結、国交正常化を求める世論と運動を強めなければならない。

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