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ウィキリークス・アサンジ逮捕の背景 エクアドルの親米・新自由主義路線への転換

 内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジが亡命申請し、7年間も避難していた在英エクアドル大使館で、ロンドン警視庁によって拘束された。これは、反米社会主義の道を歩んでいた南米エクアドル政府が、この1年余りの間に親米・新自由主義路線に転換したことと深く関係している。

 

ベネズエラの動きと連動

 

 2017年4月、エクアドルの大統領選でコレア前大統領の反米・社会主義路線を継承することを公約に立候補したモレノが勝利した。だが、モレノはベネズエラのグアイドに先駆けてアメリカと手を結び、この公約を投げ捨て逆の道を突っ走ってきた。

 

 コレア前エクアドル大統領は、アサンジ逮捕を受けたツイッターで、「モレノが英警察を大使館に入れて逮捕させた。エクアドルだけでなく南米史上に残る最悪の裏切り者だ」と非難している。

 

 2018年8月、モレノは米州ボリバル同盟(ALBA)からの脱退を表明した。ボリバル同盟は04年、キューバのフィデル・カストロ国家評議会議長とベネズエラのチャベス大統領(いずれも当時)が主導して、「公正・平等」を旗印にアメリカと一線を画し、ラテンアメリカ8カ国で結成した経済連携機構である。現在はベネズエラのマドゥロ大統領が主導している。

 

 このたびのアサンジ逮捕はその意味で、トランプ政府によるベネズエラの主権侵害と連動した事件となっている。2013年、エクアドルの首都キトで開かれた第18回世界青年学生祭典で、コレア大統領(当時)が各国の若者たちに向けて演説をおこなっている。以下はその一部である。

 

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コレア前エクアドル大統領

 エクアドルは、若者を信じ、世代交代を信じ、あらゆる公平性を信じている。かつてなく狡猾なその帝国主義は、ミサイルや弾丸ではなく、ドルという形で現れる、資本の帝国である。

 

 本物の平和は正義に支えられている。貧困を乗り越えることこそ、世界が今もっとも必要としている道徳である。なぜなら今、貧困を招く元凶は、資源の枯渇や中世の大飢饉のような自然要因ではなく、不正で排他的なシステムだからだ。貧困は慈悲や良心ではなく、構造と権力関係の変革によって克服すべきものだ。すべては権力と資本、つまり邪悪なシステムに、妥協しない市場、新自由主義経済に支配されているのだ。

 

 これは歴史的な決定論でも、自然法則でもない。支配権力によって押し付けられた構造である。つまりわれわれが進めているのは、このシステムを変え、正義を手に入れ、貧困を克服する政治的闘争だ。

 

 合法的な政治プロセスを経て不正な権力関係を変えようとする革命政権や進歩主義政権を「自由を壊した」と告発することはできない。それでも、彼らはわれわれラテンアメリカのすべての進歩主義政府(ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、ニカラグア、キューバ、アルゼンチン)から、自由という崇高な理念を奪おうとしている。だが、正義なしに自由はない。不平等が横行するラテンアメリカでは、正義を追求してこそ本物の自由を手に入れることができる。

 

 若さは年齢ではなく魂の状態によっている。正義のためにたたかい、震えている間は青年でいられる。社会的地位のためではなく、膨大な不正に満ちている社会を国をラテンアメリカを、世界を変革する責任を持つことが若さなのだ。

 

 「物事をはっきり見ること」。われわれと同じ言語を使って青年を操ろうとする人人がいる。ラテンアメリカの進歩にとって、最大の敵はマヒした右翼ではなく偽りの過激派左翼、つまり「全か無か」という極端な左翼だ。彼らは間抜けで幼稚で、右翼の最大の共犯者である。彼らはエコロジーといった若者が喜ぶ話題を持ち出す。だがそれは、われわれの資源を活用せず、金鉱山に座っている人を飢え死にさせる幼稚なエコロジーだ。

 

 ベネズエラのボリバル革命が石油なしで成し遂げられただろうか。鉱業なしで偉大なエボ・モラレスによるボリビアの今があっただろうか。幼稚で無責任なモラルはもうたくさんだ。必要なのは、貧困に打ち勝つことだ。世界を汚染する者の祭壇に民衆を供える行為は無責任極まりない。

 

 人権と言っても、それは「彼ら」の人権である。米州人権委員会は、われわれの兄弟が作ったものではない。その本部はほかでもなくワシントンにあるのだ! 彼らの行為は新植民地主義に他ならない。エクアドルとラテンアメリカはもうこの新植民地主義を受け入れない。

 

 表現の自由とは、資本主義を擁護するCNNのようなテレビ局のための自由でしかない。商品としての情報、資本主義的情報システム、利益目的の個人的な交渉によって生み出されるのは表現や報道の自由ではない。それは企業のための自由である。美しい言葉で飾られても、われわれは実際は権力者たちの囚われの身にあるのだ。

 

 「深く感じること」。憎しみではなく愛を持って行動すること。「太く行動すること」。これは左翼が忘れがちなことだ。求めるだけでなく、道筋を立てること。効率よく、確信をもって行動すること。競争力のない主観主義は、悪意以上にラテンアメリカを傷つけてきた。素晴らしい文化を探し、人の才能を育て、われわれの国を、ラテンアメリカを、全世界を前進させよう。

 

 この小さくても大きな誇りと主権を持つエクアドルが、シェブロンのような多国籍企業の腐敗とたたかっていることについて議論し、世界中に伝えてほしい。シェブロンはわれわれのアマゾンのジャングルを汚染し、裁判に負け、ついにはエクアドルの威信を傷つけようとする世界的なキャンペーンを始めた。しかし、彼らが相手にしているのは最強の敵である。なぜならわれわれには尊厳と主権があり、侮辱的で不品行であくどい行為に立ち向かう「真実」という最強の武器があるからだ。

 

 若者たちよ、より公正で帝国主義のない世界のためにたたかおう。人類がかつて対峙したことのないほどの資本の帝国とのたたかいだ。私にとって正しい左翼の、そして全人類の何より重要な挑戦とは、資本を超えた人類の主権を勝ち取ることであり、市場を上回る社会の主権を勝ち取ることだ。

 

 資本を上回る人間の主権のために、市場を上回る社会の主権のために、権力関係を変えるために、たたかおう。民衆に支配される世界を実現するために、人間的なグローバリゼーションのためにたたかおう。

 

 不正な世界の秩序は、エクアドルのような小国では変えることはできない。それを知らなかったことが、無知で幼稚な「左」翼の最大の過ちだ。だが、世界の青年が団結すれば、秩序を変えることが可能だ。政権を取り、今より何世代も先の将来のために、より人間味のある、公正で連帯した、社会主義世界を残そうではないか。

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