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「ひと担ぎの水」を高齢者に

 全島断水によって1万5000人の暮らしが脅かされている周防大島町(面積138・1平方㌔㍍)。瀬戸内海で3番目に大きい島といわれても、行ったことがない人人にとっては少し想像しづらいかもしれない。行政区の面積としては、山口県内では山陽小野田市や柳井市に匹敵する広さで、東京都23区と比べるとおよそ4分の1弱ほどの面積になる。かつてはこの島のなかに大島町、久賀町、橘町、東和町という4つの自治体があったほどだ。

 

 平地が限られ、海沿いに農漁業を生業とした集落が分散しているこの大きな島で、臨時の給水所が14カ所設置されている。しかし面積が広いが故に、車がなければとりに行けない住民がほとんどだ。とくに高齢化率が50%を超えているなかで、お年寄りにとって水運びは大変な困難を伴っている。なかには勾配のある山側に暮らし、車が入れない地域もある。若者にとってはたかが「ひと担ぎの水」であっても、高齢者にとってはその「ひと担ぎの水」すら得ることが難しいのである。

 

 現地取材に奔走してきた記者曰く、目下、大活躍しているのが井戸水で、広域水道が断たれたもとで救いになっているのだという。しかし井戸を潰してしまった箇所になると、高齢者が給水所から自宅まで数本のペットボトルを運ぶのにも困っている。往復の距離や勾配のきつさ、足腰の状態など条件は千差万別だが、苦労して運んだ数本のペットボトルが空になれば、再び汲みに行かなければならない。これを復旧まであと一カ月続けろというのは余りにも酷で、体制的なサポートが必要だ--と。

 

 地域や隣近所の助け合いによって、誰一人取り残さないように努力が続けられている。その一方で、既に2週間以上が経過し、毎度のように頼むことへ申し訳ないという感情を抱いている高齢者も少なくない。お風呂に入って疲れをとることもできない、満足に洗濯ができない、料理にも躊躇して、食器を洗えば水の残量を思い、トイレに流す水量を心配し…。こうした生活が長引くことは、健康面、衛生面においてもよくないことはいうまでもない。

 

 完全復旧がまだ見込めないなかで、「給水所にとりに来て下さい」式だけでは対応できない高齢者がおり、そのような社会的弱者に水を運ぶ力が必要とされている。現状では大島大橋が通行止めになることもあってボランティアが少なく、町役場だけではとても手が回らない。島には若者が多くいるわけでもない。相互扶助の力にも限界がある。過疎高齢化の著しい島での災害対応であり、住民の生命や健康を守るために、より多くの島外のマンパワーを動員するような、行政機能の臨機応変さも求められている。

 

 衝突事故によって、蛇口をひねれば各家庭で水が使えた状況が一変し、みなが人力で受けとりに行く手間や労力が増えた。この社会インフラの破壊は衝突事故によって起こったものであり、仮に運び屋を組織して人力によって高齢者に水を届け、「蛇口をひねれば」を代替する費用がかかったとしても、それらは損害賠償として請求して然るべき性質のものだろう。

 

 「ひと担ぎの水」をお年寄りに届ける。ほんのわずかな力にしかなり得ないが、行政の動きが鈍いようであれば、ボランティアで勝手にやるしかないのかも知れない。  武蔵坊五郎

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