いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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デルタの猛威

 デルタ株の感染力の強さを証明するかのように、首都圏をはじめとした都市部はこれまでと比較にならないほど感染爆発の局面を迎えている。日々伝えられる感染者数たるや前週の2倍とかそれ以上の数値を叩き出しており、尋常でない局面といえる。既に第3波時期の大阪と同じように、自宅療養者すなわち医療にアクセスできず放置される者の数も1万人をこえるなど増大している。

 

 理論疫学者としてこれまでも新型コロナウイルスの感染状況や予測シミュレーションを的確に示してきた京大の西浦教授の見立てでは、8月中旬には1日の感染者数は5000人台となり、8月末には1万人をこえる計算となり、8月10日には自宅療養者の数は3万人をこえる見通しなのだという。そうなると保健所による入院調整どころの話で済まないことは容易に想像がつく。路上に人々が寝転がって、大量にかき集められた酸素ボンベで辛うじて命をつないでいる海外のニュース映像が、まるで他人事とは思えないレベルの事態といえる。そうして医療現場では、コロナ対応が他の基礎疾患の患者たちの治療にも影響を与え、手術延期や外来その他の診療制限、救急医療の逼迫など、すべてが連鎖してまたしても医療崩壊の危機を迎えている。


 緊急事態宣言が発出されているのに、それはただ「みんな自分で勝手に気をつけてね」のサイレンというだけで、防疫としては何ら意味をなしていないのが致命的だ。童話『狼少年』がたどったのと同じように、終いには誰も政府の緊急サイレンを相手にしなくなった局面で、狼の群れならぬデルタ株が襲来しているといった光景でもある。童話のなかでは、何度も何度も嘘をついて村人たちを弄んだ少年のいうことを誰も相手にしなくなり、ある日、本当に狼の群れが襲ってきて少年が助けを求めたものの、皆は「またいってらぁ」くらいに思い、村人たちが気付いた時には少年も羊たちも跡形もなくなっていた――。日本政府のやってます感だけのコロナ対策、国民を弄ぶような「緊急事態宣言」及びその解除と再びの緊急事態宣言の無限ループについて、村人ならぬ国民の多くが相手にしなくなり、そこにデルタ株が襲来しているのである。政治への信頼や信用の失墜が、今日のように「誰も相手にしない」ような状況をつくり出してしまった最大の問題といえる。


 日本政府はこの1年半、各国がやっているように防疫の基本である徹底的なPCR検査と隔離をするでもなく、生活補償を満足に支給するでもなく、ワクチン一本頼みで突き進んできた。五輪開催のために疫病禍においてやらなければならないことを二の次、三の次にしてしまい、後手後手になったことが今日の感染爆発につながっている。やったことといえば1人10万円とアベノマスク2枚の支給のみ。営業自粛をお願いした飲食店への補償も何カ月も支払いが遅延したり、営業規模によっては家賃補償にもならず実態に見合わないため、やむなく営業せざるをえないなど、いくつもの問題点は既に炙り出されてきたはずだ。しかし、何一つ解決しないために「やってられるか!」の空気が勝り、しかも徹底的な検査をやらないために無症状者の市中野放しは継続され、感染力の強いデルタ株になると感染爆発の規模が規模だけにお手上げ状態になっているのである。


 同じデルタ株の感染が見つかった台湾や中国では、徹底的なPCR検査によって感染者を隔離することで、今のところ封じ込めに成功している。やらなければならないことはやはり検査、隔離の徹底であり、いつでもどこでも何度でも無料で検査を受けられるような体制を全国津々浦々に整備し、感染者を保護隔離して封じ込める以外にはない。あてずっぽの目隠しチャンバラをやめ、防疫の基本を確実に実行していくことが必要だ。


 菅義偉が死んだ魚のような目をして緊急記者会見にあらわれ、オロオロしながら「安心安全」を口にしているのを見て、改めてこの連中にはコロナ禍の舵取りは無理なのだと痛感させられた。そして、菅義偉にすべてをなすりつけた安倍晋三が、にわかに山口4区に戻ってきて地元でのミニ集会を重ね、熱心に企業回りをしているのを見て、またワクチン供給の遅れ(8月1日現在、下関市では50歳代以下は予約すら始まらない)を問われて「あれは前田市長(元安倍事務所秘書)がいけないんですよ」なんてまるで他人事のように話しているのを見て、街の皆さんのなかでは「コロナ禍の舵取りを放り投げておいて、自分だけはワクチン打って選挙活動なんだね…」「首相までやった者がすべてを元秘書だった市長のせいにして、ほとほとどうしようもない男だな…」という声が日増しに高まっているのである。     吉田充春

 

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