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欠陥機大量購入の愚 F35 147機に30年で6兆円もの支出

米政府監査院が技術的欠陥を指摘

 

 「日本は米国製防衛装備の最大の買い手だ。F35戦闘機を105機購入すると発表した」「米国の同盟国の中で日本が最大のF35保有国になる」--5月27日の日米首脳会談後の会見でトランプ大統領が自慢げに語った米国製ステルス戦闘機F35について、米政府監査院(GAO)が欠陥品であることをあいついで指摘している。欧州では調達中止が広がるなかで、日本では4月、航空自衛隊に導入したばかりのF35が青森県沖で墜落する事故が起きており、米国政府機関が「欠陥機」と認めるF35の大量購入について強い懸念が渦巻いている。

 

 日本が購入するF35戦闘機は、この3月末までに三沢基地に配備された13機を含める購入決定分とあわせて147機にのぼる。機体価格は1機116億円といわれ、総額で1兆7052億円。さらに防衛装備庁の年次報告書によれば、1機あたり年間の維持管理費は307億円であるため、機体購入額を含めた30年間の支出総額は6兆2000億円をこえる莫大な額となる。

 

 F35については、これまでも無数の製造上の技術的欠陥が指摘されてきたが、GAOは4月に正式に報告書を公表した。そこでは、必要な部品が調達できていないことや修理の長期遅延などが原因で、2018年の5月から11月の間に米海兵隊に配備されたF35の3割が飛行不能に陥っていたことを明かし、「戦闘機として必要な要件を満たすだけの実績が揃っていない。多面的な任務が遂行できず、必要な距離を飛行することもできない」と指摘している。

 

 とくに「危機的で安全性や重要な性能を危険にさらす」欠陥が、前年の報告書であげられていた111件のうち13件が未解決であり、運用試験が始まった昨年12月以降も新たに4件判明している。

 

 具体的には、「コックピットの画面がフリーズ(システムの異常による停止)し、ソフトウェア修正のための運用試験開始が遅延」「夜間飛行でヘルメット装着型のディスプレイが不鮮明になる」などのほか、酸素欠乏などで乗員の身体にかかわる異変が35件も発生するなど、パイロットの生命維持装置(LSS)にも欠陥を抱えているという。いずれも原因を特定できておらず、「今後数年解決しない問題もある」としている。だが、米国防総省はこれらの欠陥の修正をフル生産の開始を決定する今年10月以降に先延ばしする方針で、GAOは多くの欠陥が「フル生産までに解決されない」と批判している。

 

 また、5月に公表された報告書では、「製造上の欠陥によりエンジン燃料管が飛行中に破裂した」事例を記している。しかも、交換が必要な古い燃料管が117機で使用されており、これは世界中に配備されたF35の約4割に当たると報告している。

 

 昨年4月の開発試験終了前にも966件の欠陥が確認されており、年末までに800件以上の欠陥が解決に至っていなかったことも明かしている。米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」は、米軍が開発中の「最悪の兵器プロジェクト」のワースト5にF35戦闘機をあげた。

 

 今年4月に青森県沖で墜落した航空自衛隊三沢基地配備のF35「ライトニングⅡ」は、同型機では初の事故であり、米ロッキード・マーチン社が開発し、はじめて日本で組み立てられた最新鋭機だった。乗っていたパイロットは行方不明、エンジンや主翼の一部をのぞいて機体の大部分も行方不明のまま2カ月が経過し、防衛省は捜索の打ち切りを表明した。事故原因を特定するために必要なフライトレコーダーも見つかっていないにもかかわらず、事故の原因は「パイロットが平衡感覚を失った可能性が高い」と行方不明のパイロットの人的問題として片付けて同型機の飛行再開を命じている。

 

 ところが事故機は2017年6月の試験飛行で冷却系統の警報装置が作動して名古屋空港に着陸し、昨年8月にも不具合で千歳空港に着陸しており、同機を含めて配備したF35・13機のうちの5機が不具合で7回も緊急着陸していることを防衛省が明らかにしている。

 

 事故機のパイロットが緊急脱出をしていなかったとの情報とともに、米国であいついで発生しているパイロットの酸素欠乏(呼吸調節装置の故障)による重大事故との共通点も指摘されており、事故原因に機体の問題が絡んでいることが濃厚といえる。だが、防衛省は「配備計画は変更はない」として運用を継続する方針だ。

 

 一方、F35の導入を決めていたイギリス、フランスが同機の調達を中止したのにつづき、ドイツ国防省も調達中止を決定。同じく共同開発国であるカナダ政府も、購入・維持価格が160億ドル(約1兆3360億円)から450億ドルへと3倍近く高騰したため、予定していたF35全65機の導入を白紙撤回した。イタリア政府も、長期的に90機の調達を予定していたが、国防相自身が「追徴金の原因となる」として調達の打ち切りを表明している。オランダも、導入機数を90機から37機へと大きく削減した。

 

 製造国の米政府機関が欠陥機と認定し、現実に原因不明の事故や墜落があいついでいるF35の導入は、国防云云以前に、乗り込む自衛隊員の生命と安全にかかわる重大な問題をはらんでいる。購入や運用を決めるのは政府だが、費やされるのは6兆円を超える膨大な国民の税金であり、命を賭して乗り込むのは自衛隊員である。そして墜落すれば製造元を守るために「パイロットの過失」とするなど、「国防」を掲げながら、自国民の財産や生命よりも米国の利益を優先した無責任かつ異常な取引が日米間で進行している。

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