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ついに公文書改竄疑惑まで浮上 森友学園問題めぐる終わりなき嘘と隠蔽

(左上から)麻生財務大臣、安倍首相、安倍昭恵、(左下から)稲田元防衛大臣、籠池前理事長、佐川国税庁長官

 

日日崩壊する統治への信頼

 

 昨年2月に発覚した森友学園への国有地売買をめぐる疑惑は、安倍政府が「記録もなければ記憶もない」で幕引きを図ってきたものの、次から次に新事実が判明し、ついに公文書の改竄疑惑にまで発展した。森友学園問題の発覚から一年の経過は、疑惑解明から逃げれば逃げるほど深みにはまり、はじめの嘘を隠すために新たな嘘をつくことのくり返しだった。証拠が山と積まれても警察も検察も動く気配を見せない異常さのなかで、思い上がった権力の醜態を国民は延延と見せつけられている。自衛隊日報、労働時間データの廃棄やねつ造などとあわせて、政治や統治機構への信頼が日を追って崩壊している。


 国による公文書の書き換え疑惑は、森友学園と財務省が、国有地の貸し付け契約(2015年5月)と売却契約(2016年6月)を交わした時の決裁文書と、問題発覚後、同じ文書として国会議員に提示したものとの文面が相違していることから発覚した。元の文書にあった「特例的な内容となる」「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」など、国の積極関与を裏付ける文言が大幅に削除されていることを『朝日新聞』が報じた。昨年2月に疑惑が表沙汰になって以降、政府としては誰にも見せていないはずだった元の文書がすでに『朝日新聞』の手に渡っていたことを意味している。


 文書の改竄は他にも、「特例的な取引となる」「本件の特殊性」などの文言が削除されたり、森友学園側の「要請」と書かれていた部分が「申し出」に変わり、調書からは貸し付けに至る経緯を説明していた項目がまるごと削除されているなど複数カ所に及んでいるという。


 森友学園への土地売却について、政府はこれまで「特別扱いではない」「法令に基づいて適切に処理している」「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」とくり返し答弁してきたが、文書からはそれと矛盾する部分が作為的に削除・改竄されていたことになる。見られて困るから削除したのであり、困る張本人は、自身の嘘がばれてしまう安倍政府自身にほかならない。

 

財務省が国会議員に提示した決裁文書

 公文書の偽造・改竄は、刑法第155条で「1年以上10年以下の懲役」もしくは「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」と定められた犯罪であり、とくに職務上の権限をもつ公務員が意図的に公文書を偽造した場合の罪は重い(刑法156条)。起案日も決裁日も同じで、同じ担当官の決裁印や大臣印まで押された文書が、どの過程で、誰の指示によって書き換えられ、あたかも原本通りであるかのような偽りの体裁で国会に提出されたのか、物証がある以上「記憶がない」では済まされず、政府には説明責任が求められる。


 政治家の違法行為を隠すために国の機関を使って公文書まで簡単に書き換えられるのであれば、公文書がもつ証明文書としての役割、公共機関の社会的機能としての信用性などないに等しい。そのため有印公文書の偽造・変造は、安倍政府が強行採決して昨年施行したテロ等準備罪(共謀罪)の適用要件にも含まれている。安倍政府が財務省を「犯罪組織」と見なして徹底捜査するか、自分で自分を処罰することなしには世間は誰も納得しない。


 この公文書改竄について麻生財務大臣は「大阪地検による捜査中」であることを理由に国会での答弁を拒否したが、原本を確かめれば自明のことであり、説明が長引けば長引くほど疑惑は膨らむ。認可権者として国有地売買にかかわりながら「記録は棄てた」といいはってきた佐川前理財局長(現・国税庁長官)ともども担当官の国会での証人喚問が必要な事態となっている。

 

破綻した愛国ビジネス

 

 森友学園の小学校新設のために大阪府豊中市の国有地をタダ同然(売却価格の9割に及ぶ8億2000万円値引き)で売り払った問題は、昨年2月に不正売買の疑惑が発覚し、同学園が「安倍晋三記念小学校」と銘打って寄付金を募っていたこと、名誉校長に安倍昭恵首相夫人みずから就任し、同系列の塚本幼稚園では「教育勅語」や「五箇条の御誓文」の暗唱、神道精神にもとづく教育方針を打ち出し、日本会議や自民党の国家議員などがこぞって講演に出向いて絶賛していたこととあわせて物議を醸した。


 問題発覚直後の国会で安倍首相自身が「私や妻がこの(森友学園の)認可あるいは国有地払い下げにかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめる」(昨年2月19日)と宣言して以来、政府は土地売買をめぐる取引の正当性を主張してきたが、隠せば隠すほど新事実が次次に明るみに出て、すでに政府が説明できない証拠が山積みとなっている。


 安倍昭恵本人が2回も森友学園に講演に出向いて「こちらの教育方針は主人も大変素晴らしいと思っている」「もし名前をつけるなら、総理大臣を辞めてからにしていただきたい」などと発言していたことや、運動会では「安倍首相ガンバレ! 安倍首相ガンバレ!」と園児たちに連呼させてきたことは映像としてテレビで放映された。


 土地取引に関しては、首相夫人付きの谷査恵子秘書官が、国有地売買について「時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました」として具体的な財務省の見解をことこまかに森友学園側に報告していたFAX文書もあきらかになった。このとき学園側が要求した「土壌汚染を理由にした賃料半額」も「工事代金の立て替え払い」も、まるで「神風」が吹いたように要求通りに実現していた。役人の忖度のレベルをこえて、首相夫人本人が派手に立ち回っていたことを示す証拠となったが、政府はこのFAXについて「谷氏が個人的にやった」といい、「行政文書ではない」との答弁書を閣議決定して誤魔化した。


 また、防衛大臣として森友学園に感謝状まで送っていた稲田朋美元防衛大臣は、設立当初から夫婦ともに同学園の顧問弁護士として裁判に出廷し、今回の国有地売買問題についても弁護士事務所として相談を受けていながら、国会では「森友学園の顧問弁護士になったことはなく、相談を受けたこともない」「10年前に関係を断った」と虚偽答弁をくり返してきたことが判明し、謝罪に追い込まれた。籠池前理事長は、稲田元大臣の実父である椿原泰夫氏(関西で有名な保守活動家)が幹部を務める団体に所属し、森友学園の学校設立の立案時からの相談役であったことも明らかになった。


 昨年3月には、籠池前理事長自身が国会の証人喚問に応じた。そこでは、安倍昭恵夫人とは月に数十回も携帯やメールで頻繁にやりとりをする間柄であり、名誉校長就任が決まった同園での講演の後に園長室で「主人(安倍晋三)からです」と100万円が入った封筒を渡されたこと、「帰られて5、6分後に昭恵夫人から電話があり、“寄付については黙っていて”といわれた」こと、前述のFAXの内容通りに昭恵夫人の関与からトントン拍子で国有地取得と学校認可についての動きが進んでいたが、昨年2月8日の問題発覚後は、今度は「私がかかわったということは、裏で何かがあるのではと疑われないように」という口止めメールが昭恵夫人から届くようになり、それ以降「トカゲの尻尾切り」のようにハシゴが外されていることを訴えた。


 安倍首相は籠池氏について「非常にしつこい」「詐欺を働く人」と国会で断言したが、そのような人物に特別な便宜を図って国有地を払い下げた理由を明らかにし、その国の責任を問わざるをえないものとなった。


 また、学校設立についての規制を緩和し、事務局として私学審議会で「認可適当」の答申を出していた大阪府・松井一郎知事(大阪維新の会代表)の関与も浮き彫りになった。財務省が国有地を売却するには、大阪府による学校設置認可が担保されなければならず、学校認可も国有地取得を前提にしなければつじつまがあわないため、国と大阪府の二人三脚で異例の取引が進んでいた。


 森友学園では「教育再生地方議員100人と市民の会」と称する定期会合が開かれ、「籠池夫妻から“こんにゃく(100万円入りの封筒)”を渡されそうになって断った」とみずから名乗り出た鴻池祥肇参院議員が基調講演していたことや、事務局長には増木重夫・元在特会関西支部長、理事長は辻淳子・大阪市議(維新所属)が務め、支援者は安倍ブレーンで固められていた。


 安倍首相夫妻の「てのひら返し」を皮切りに、それまで森友学園で1回につき50~100万円の講師料を受けとって講演をするなど盟友関係にあった自民党や維新などの議員、「保守系」評論家や団体、その系列下にあった建設施工業者や顧問弁護士までが蜘蛛の子を散らすように距離をとりはじめ、一斉に籠池バッシングを始める姿は、かれらの吹聴する「愛国心」とは、「地獄の沙汰も金次第」の愛国ビジネスであったことを浮き彫りにした。

 

関与裏付ける証拠は山積み

 

 財務省の麻生大臣、佐川前理財局長らは「法令に基づき適切に処理した」といいながら、それを裏付ける文書も交渉記録も「廃棄した」といい、「記録も記憶もない」として逃げ続けていたが、「トカゲの尻尾切り」で破産手続きに追い込まれた森友学園の側が国との交渉記録のデータを次次に公開した。


 なかでも信憑性の高い音声データは、一昨年の3月に籠池夫妻が財務省本省を訪問し、理財局国有財産審理室の田村嘉啓室長らと面談したさいの国有地売買をめぐるやりとりだった。国有地売却について「どういう内容かご存じですか?」との籠池夫妻の問いかけに、田村室長は「近況の報告は受けています」「だいたい状況は承知しています」と応じている。ちなみに昨年3月の国会に参考人として出席した迫田元理財局長(前国税庁長官)は「(森友学園の件について本省では)報告を受けたことはなかった」と答弁していた。


 さらに籠池夫妻が、近畿財務局がゴミの埋め戻しを提案していることを挙げて、「棟上げ式に首相夫人が来られて餅をまくことになっているから、(工事の遅れるような事態に)余計にびっくりしている」「あの方(昭恵夫人)自身が愚弄されている」とまくしたてると、田村室長は「国有地は全国にありますけど、管理処分は基本的には全部財務局の権限でやっている。ただ、“特例的なもの”はわれわれのところ(財務省本省)にも相談に来るので、こういう事実を踏まえてどうしたらいいのか、これはちゃんと検討します」と返答。ゴミを撤去すれば、土地の売却価格より撤去費用の方が高くなるという前代未聞の事態になるが、「特例的な」案件であるから対応を練るという内容だった。


 この音声データについて、佐川前理財局長は国会答弁で「本人かどうかわからない」「(面会した田村室長は)記憶にないといっている」と全面否定したが、田村室長は谷査恵子秘書からの問い合わせに対応した人物でもあり、録音された音声は日本音響研究所の声紋鑑定で本人のものであることが確定し、財務省も最終的に本人であることを認めた。

 

 また同年5月18日、塚本幼稚園で籠池夫妻が近畿財務局の池田靖・国有財産統括官と三好管理官と面談したさいの録音データでは、「ゼロに近い形で(国有地)払い下げをしてほしい」と語気を荒げる籠池前理事長に対して、池田統括官は「理事長がおっしゃるゼロに近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やっている。だが(ゴミ撤去費用として国交省が支払った)1億3000万円を下回る金額にはならない」とのべながら、「来月早早には、金額をご提示させていただくので、それでご判断いただきたい」と値段提示を約束し、「1億3000万以下への値下げは厳しいが10年分割の支払いなら可能」「劇的に月額の負担料が安くなる」と異例の譲歩案まで提示していた。

 

 そして、2014年12月に近畿財務局が森友学園に定期借地に関する手引き書や契約書の原案まで手渡していたことも新たに判明した。


 近畿財務局が作成した「今後の手続きについて」と題するA4―3枚の手引き書には、「(国有地の)定期借地契約は、大阪府私学審議会において本件計画(学校設置)が認可適当と答弁され、国有財産近畿地方審議会で本件売払いを前提とする貸付けが適当と答申され、その後、見積もり合わせにより貸付料が決定した後に締結されることになります」と明確に記されており、2年後に「大量の埋設ゴミ」が見つかって8億円値引きに至る全シナリオをレクチャーする内容だった。それには、名前と日付を書きさえすれば提出可能な契約書原案まで添付されており、先の録音データとともに、昭恵夫人の口添えで国が能動的に学校設立に関与していたことを示す確証となった。


 籠池前理事長は野党議員のヒアリングで、その当時は10日に1度の頻度で近畿財務局に出向いており、「昭恵夫人にはその都度、電話で交渉の経緯について報告していた」と証言。国がボーリング調査によって「国有地のゴミ混入率47・1%として撤去費用を算出した」としてきた8億円値引きの根拠についても「近畿財務局も大阪航空局も(埋設物に関する)資料は持っていなかったのでこちらの業者の資料を提供した」と証言し、国交省による「ボーリング調査による独自の算出」もねつ造である可能性が濃厚になった。

 

籠池夫妻のみ勾留し口封じか

 

 切り捨てた「トカゲの尻尾」の大暴れに慌てふためいたのが安倍政府で、昨年7月31日には大阪地検特捜部が、籠池夫妻を補助金詐取容疑で逮捕。「逃亡や罪証隠滅の恐れがある」として、それから7カ月たつ現在にいたるまで異例の長期勾留が続いている。しかも、弁護人以外との面会や手紙のやりとりを禁じる接見禁止処分が付いており、家族すら接触できない。あれほどメディアに堂堂と顔をさらし、しかも自宅は強制捜査で証拠品を押収されたうえに強制競売にかけられ、身ぐるみ剥ぎとられた人物が、逃亡や証拠隠滅できる条件は極めて小さい。これは一切外部に発言や情報を発信させないための口封じの措置であることが誰の目にも明らかになっている。家族は高齢で持病持ちの夫妻が「エアコンも窓もないわずか4畳の独房」に長期に閉じ込められていることを心配して接見と保釈を求めているが、大阪地裁はそれすら拒否している。よもや「死ぬまで檻の中に閉じ込めるつもりか?」と思わせる「人質司法」が続いている。


 一方、大阪地検は、国有地売却に関与した財務省に対しては、任意の事情聴取にとどめており、強制捜査をする気配すらない。そして、国会で虚偽答弁をくり返した佐川理財局長は、国税庁長官に栄転してから一度も記者会見をせず、メディアの目から逃れるためにホテル暮らしに身を潜める「逃亡生活」を続けている。そして、財務省はせっせと文書を棄てて「証拠隠滅」に熱を上げ、ついには公文書の改竄疑惑まで浮上した。


 森友学園の名誉校長として学校設立に向けて「大活躍」した安倍昭恵は、国会招致も記者会見での説明すらせずに自由奔放な毎日を送り、「個人的な活動」で財務省と森友学園の仲介役を担っていたとされる昭恵夫人付の谷査恵子秘書は、なんら発言することもなくヨーロッパ勤務に異動となった。

 
 積極的に記録資料や情報を公開し、国会証人喚問にも応じ、事実解明を求める側が独房に閉じ込められる。一方で、沈黙したり「記憶にない」とシラを切り、記録や公文書を捨てて逃げ回っている側が立身出世や自由を保障され、なんの制裁を受けることもなく、逃避行や証拠隠滅に精を出すという本末転倒がくり広げられている。


 このような国家の私物化とそのための公的文書の隠蔽やねつ造は、森友学園問題にとどまらない。加計学園獣医学部問題における内閣府の議事録改ざん、南スーダンの自衛隊日報をめぐる防衛省の文書の隠蔽、「戦闘」の「衝突」への書き換え、厚労省による裁量労働制度をめぐる労働時間データのねつ造等……安倍政府の下では枚挙に暇がない。公僕であるはずの霞ヶ関がいったいなにを基準に仕事をしているのか問わなければならない。これらの偽造・改竄は官僚の人事権を握る安倍晋三の意図に沿ったものであることは疑いようがないものだ。


 隣の韓国では、特定企業からの収賄や公務上機密漏洩などの国権私物化の容疑で弾劾・逮捕された朴槿恵前大統領に懲役30年が求刑された。日頃から韓国や朝鮮を蔑視する輩が、同じく国家の私物化を謳歌しながらなんのお咎めもなく、開き直って公文書までねつ造し、「東京五輪までは総理を続ける!」と首相の座に居座っている。韓国と比べてもまるで自浄能力の働かない日本社会のこうした不潔な現実について考えないわけにはいかない。道徳教育の義務化や憲法改定を主張する政治家や官僚機構に道徳や規範意識が吹っ飛んでおり、統治機構そのものの社会的信用が日日崩壊している。


 森友問題については、「いつまでやるのか」ではなく、「いつまで隠すのか」「いつまで犯罪を続けるのか」という問題であり、関係者をみな捜査なり国会招致するなりして真相を解明する以外に国政の信頼回復の道はない。

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