いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

米国が要求する日本の核武装  既に核大国といえる現実

 北朝鮮の核実験やミサイル騒動がくり広げられる一方で、日本政府は柏崎刈羽原発の再稼働手続きを進めたり、イギリスへの原発輸出(日立製作所)に2兆円の政府補償をつけたり、原子力産業のテコ入れに躍起になっている。武力衝突になれば真っ先に狙われる原発を国内において野放しにしていることへの違和感も大概なものがあるが、世界的に福島事故を経て原発撤退のすう勢が強まるなかで、なぜ日本政府だけが原発から撤退できないのか疑問視する声は強まっている。原発は「平和利用」を掲げて持ち込んだものだが、電気を作るためだけなら他の技術によってタービンを回せば事足りる。そこで製造するのはプルトニウムであり、軍事的には核兵器に転用することが可能なものだ。欧米では採算のとれない原子力事業からメーカーが逃げ始め、おかげで東芝、日立、三菱といった国内メーカーがババ抜きに引っかかって散散な目にあっている。しかし、それでもなお世界の核大国の下請のような位置で、原子力産業の維持を委ねられている構造がある。核と原発は切っても切り離せないもので、それこそ北朝鮮以上に核大国と化している現実に目を向ける必要がある。

 

 目下、北朝鮮がミサイル発射や水爆実験をくり返して問題になっているが、対岸の日本はミサイル技術という点では固体燃料を用いた中型ロケット・イプシロン(ICBMへの転用が可能)の打ち上げにも成功し、液体燃料のH2Aなどのロケット発射技術も備えている。核弾頭に搭載するプルトニウムなども54基の原発が有り余るほど吐き出しており、是非は別としていつでも核武装できる環境にあるというのが世界から見た常識だ。「狙われる」「怖い」といって丸裸なわけではなく、対米従属構造で飼い慣らされた状態のもとで、他国からするとそのような脅威を内包した国として見なしていてもおかしくない。

 

 この間、北朝鮮騒動とかかわって見過ごせないのは、アメリカ政府や議会のなかで「日本の核武装容認」についての論議が強まってきたことだ。アメリカからすると、日本を盾にして中国やロシア、北朝鮮といった国国と軍事面においても対峙し、本土防衛の鉄砲玉にするという意図が露骨である。

 

 彼らはどのような発言をしてきたか。北朝鮮にかかわってティラーソン米国務長官が3月19日、「日韓の核武装を排除しない」と発言して物議を醸したが、トランプ大統領は選挙期間中から「在日米軍の撤退」とともに「日本の核保有容認」を主張していた。政策研究機関「ブルッキングス研究所」上級研究員は「北朝鮮が核を放棄する見通しがないからこそ、場合によっては日韓の核武装も容認し、北朝鮮の“封じ込め”をはかるべきだ」と主張している。軍事専門家のアンダース・コー氏は「日本が自前の核兵器を持てば、すべての民主国家は安全になる。強い日本は中国の膨脹を阻止するし、米軍が各地に駐屯しなくて済むようになる」と積極的な賛成を表明している。昨年6月には当時のバイデン副大統領が中国と対抗するうえで「日本は事実上、一晩あれば核兵器を製造する能力を持っている」と言明し、核武装した日本を前面に立てることに言及している。

 

 アメリカでは、北朝鮮の核開発に対して「日本の核武装」を容認する論議はすでに2011年ごろから公然と浮上してきている。同年7月にワシントンを訪れた拉致関連の合同代表団の前で、米国下院外交委員会の有力メンバーであるスティーブ・シャボット議員(共和党)が「日本も核兵器開発を論議すべきだ」と提言した。半ば公開の場でのこうした提言をしたのは、これが初めてであった。

 

 その後2013年2月に北朝鮮が3回目の核実験をおこなったあと、「北朝鮮の核武装の野望への抑止策として日本の核武装の可能性」があらためて持ち上がった。共和党ブッシュ前政府で国務次官や国連大使を務め、核兵器拡散防止をも担当したジョン・ボルトン氏が米国大手紙『ウォールストリート・ジャーナル』(同年2月20日付)に、「北朝鮮の脅威にどう応じるか」と題して寄稿し「日本の核武装」という政策選択を提起した。

 

 さらに同年3月の米国連邦議会の上院外交委員会で「日本の核武装」が主要な議題となった。「米国の対北朝鮮政策」と題する公聴会での論議は「米国は北朝鮮の核武装、とくに核弾頭の長距離弾道ミサイルへの装備をなんとしても防ぐべきだ。だがこれまでの交渉も対話も圧力も制裁も効果がなかった。いまや北朝鮮の核武装を実際に非軍事的な手段で阻止できる力を持つのは中国だけである。その中国が今もっとも恐れるのは日本の核武装だ。だから日本の核武装というシナリオを中国に提示すれば、中国は北朝鮮の核武装を真剣になって止めるだろう」というものであった。

 

 こうした動きをさらに遡ってみると、米国での水面下での「日本の核武装容認」論議は2003年ごろから目立ってきていた。下院軍事委員のマーク・カーク議員(共和党)は「日本は立派な民主主義国家であり、その日本が核抑止力を得るのは、アメリカの国益にとって明確なプラスだ。核を持った日本は本当に頼りになる同盟国として、アジアの安定化のためアメリカと一緒に仕事をしてくれるだろう。……日本人は世界中で信頼されている。日本が核を持ってくれたら、頼もしい同盟国ができたと喜ぶ米国人は多いはずだ」とのべている。

 

 有力シンクタンクであるケイトー研究所の副所長は「北朝鮮に対処する選択肢」と題する論文で、「北朝鮮の核兵器開発は止められないとの前提に立ち、北東アジア地域の“核の均衡”をつくるために、日本や韓国が自衛のための核保有をめざすなら、米国はそれを奨励すべきだ」と強調した。当時のチェイニー副大統領も、北朝鮮の核開発が「日本に核武装問題を再検討するかどうか考慮を迫るかもしれない」とのべ、日本の核武装はアメリカの国益にかなうとした。

 

 2006年にはイラン・イラク・北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しした2002年のブッシュ大統領の一般教書演説の草稿を執筆したデビッド・フラム氏が『ニューヨーク・タイムズ』で、日本にNPT(核不拡散条約)の破棄と核抑止力の構築を奨励するようにブッシュ政府に要求し、「中国や北朝鮮が最も恐れることだ」とした。同年には政治評論家のチャールズ・クラウトハマー氏もブッシュ政府に対し、日本の核兵器保有を奨励するよう『ワシントン・ポスト』で訴えた。

 

 これらの発言に貫かれているアメリカ側の意図は、日本に核武装させて北朝鮮だけでなく中国にも睨みを効かせ、アジア人同士を争わせるという戦略である。アメリカの忠実なる隷属国家として、核兵器でもって拳を振り上げた外交をやらせることを意味している。武力衝突の最前線に日本列島を配置し、中東におけるイスラエルのような存在にすることを思考しているかのようである。

 

 こうした「核武装」論に呼応する形で、自民党内でも石破などが非核三原則の見直しに言及したり、親米売国派が嬉嬉として浮き足立っている。2012年6月、1955年に制定された「原子力基本法」を改定し、「わが国の安全保障に資する」ため、原子力技術を活用するという項目を追加した。この改定は、核兵器製造能力を保持することが「わが国の安全保障」につながるとの意味合いも含んでいる。

 

日米原子力協定 日本のみ軍事転用容認

 

 日本の原子力政策は1953年のアメリカ・アイゼンハワー大統領が国連総会でおこなった「原子力の平和利用」講演に見る「平和のための原子力」計画にくみこまれたものだった。商業用原子力発電所の技術は、アメリカが「マンハッタン計画」と呼ぶ広島、長崎に投下した原爆製造の副産物として生まれたものであった。

 

 1954年に初の原子力予算を成立させ、日本原子力研究所を設立した。1955年11月14日、アメリカから日本へ濃縮ウランを貸与するための日米原子力研究協定を調印し、同年12月に発効した。研究原子炉用に20%濃縮ウラン235を6㌔㌘を限度に賃貸すること、使用済み核燃料のアメリカへの返還、貸与燃料を目的どおり使用すること、使用記録を毎年報告することなどがとりきめられた。この協定に基づいて、日本最初の原子炉として日本原子力研究所に二つの研究炉が導入された。

 

 それを皮切りに日本は「核燃料サイクル確立」へと進む。高速増殖炉もんじゅや新型転換炉ふげん、再処理工場(東海再処理施設と青森県六ヶ所村再処理工場)などを次次に建設した。軽水炉で燃やした使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉で燃やせば、燃やした以上のプルトニウムをつくることができるというものであった。だが、これはすでにアメリカで失敗済みのもので、巨額の予算を必要とする計画をアメリカでは中止し、日本に押しつけた代物だ。

 

 日米原子力協定では、アメリカから原爆の材料となるプルトニウムやウランを製造する「再処理施設」「ウラン濃縮施設」を所有することが認められている。これは非核保有国のなかでは世界で日本だけである。韓国も使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出することは認められていない。「再処理施設」「ウラン濃縮施設」の2つの施設が核兵器製造につながる技術であるのは明白である。

 

 1970年代に発効した核不拡散(NPT)条約は米、露、英、仏、中の5カ国を「核兵器国」と定め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止するとした。このNPTに加盟していない代表的な国として、北朝鮮、インド、パキスタン、イランなどがある。このNPT加盟国で非核兵器保有国のうち、核兵器を製造する技術を持つことを容認されているのは日本だけである。いいかえれば、アメリカの忠実な属国である日本に対しては、プルトニウムの軍事転用の道を開いているということである。

 

 現在日本が保有するプルトニウムはイギリスとフランスに再処理を委託したものと国内分を合わせて約48㌧、核弾頭6000発分にあたる。このほか再処理されていない使用済み核燃料から抽出可能なプルトニウムを合わせると70㌧が蓄積されているとされる。現在の推定核弾頭保有数はアメリカが7700発、ロシアが8500発、フランス300発、中国250発、イギリス225発、北朝鮮が6~8発である。生産能力だけ見ると日本はアメリカ並みとされている。

 

 プルトニウムは高速増殖炉の燃料とする以外には原爆の材料としての使い道しかない。プルトニウムはもっとも入手困難な原爆の材料である。プルトニウム精製やウラン濃縮はきわめて高い技術が必要であり、ばく大なコストがかかる。日本では高速増殖炉もんじゅは技術的な破たんにより廃炉が決定している。それでもなお新たな高速炉建設計画をうち出しているのは、プルトニウム保有の大義名分をたてるためであり、技術的にメドのない核燃料サイクルであっても、それを維持する姿勢を貫かなければ正当化できないからにほかならない。

 

 アメリカではレーガン政府時代に、クリンチ・リバーでの増殖炉計画に1980年から1987年のあいだに160億㌦を投入し、最も優秀な頭脳をつぎ込んだが失敗に終わり、議会が計画を凍結した。ドイツ、フランス、イギリスの増殖炉計画も失敗に終わったが、日本だけはその後も継続した。1988年の日米原子力協定でアメリカは、クリンチ・リバーで失敗した高速増殖炉と再処理技術を日本に大規模に移転し、核物質を量的制限なく輸入し、無制限に再処理してプルトニウムをとり出し、他国に再輸出する権利を日本に与えた。それは「日本が核武装すればアメリカの軍事負担は軽減される」とするペンタゴンの要求でもあった。ペンタゴンはまたクリンチ・リバーの技術が核兵器用に理想的なものであることも承知していた。

 

 核燃料サイクルの確立を目指したのと同時に、1970年代、日本は宇宙計画を推進する。1969年に宇宙開発事業団(NASDA)を開設した。「平和のための原子力」計画のもとでアメリカが核技術を日本に移転したのと同じように、アメリカは日本に「宇宙開発」でも技術援助をおこない、日本は世界と肩を並べる高性能の運搬ロケットを開発した。人工衛星を飛ばすためのロケット発射技術とミサイル発射技術はいい方や目的こそ違えど、使いようによっては同じものだ。

 

米本土防衛の為の人柱になるな

 

 北朝鮮よりもはるかに先行してそのような軍事技術を備えてきたことには頬被りして、「狙われる!」「それなら核武装だ」とこれ幸いにプログラムを動かし、今度は「核の傘」ではなく、アメリカに成り代わって日本列島を舞台に核を弄んだパワーゲームに興じるというのは、「独立」や「自立」ではなく、「身代わり」あるいは「鉄砲玉」のような愚かな行為というほかない。アジア各国から見た時に、それはアメリカの番犬が核兵器でもって睨みを効かせる効果となり、アメリカのために身体を張って犠牲になる国ということを意味する。集団的自衛権の行使によって地球の裏側まで自衛隊が出て行って下請をやり、日本列島そのものもアメリカのために人柱としてさらす道といえる。

 

 東アジアで軍事的な緊張が高まっているもとで、核と原発、日米原子力協定、対米従属について構造的に捉えた論議を起こすことが求められている。日本社会はどのような進路をとるべきか、差し迫った課題とどう向き合うべきか、知識人をはじめとした人人の積極的発言が待たれている。

関連する記事

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterEmail this to someone

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。