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反響呼ぶ大西つねきのお話会 in 下関 社会と人間蝕む金融システムの本質伝える

市内外から300人が聴講

 

 「お金の仕組みを知ってワクワクする未来を作ろう! 子ども達の未来のために」をテーマにしたれいわ新選組・大西つねき氏のお話会(主催/スマイルマップやまぐち)が2日、下関市のシーモールホールで開かれた。大西氏は、JPモルガン銀行やバンカース・トラスト銀行でトレーダーとして働いてきた経験から、貧困や格差、戦争など現在の社会で起きている問題の根本原因である金融経済の不条理な仕組みについて解説し、このシステムを変える世界的な変化がすでにはじまっていることについて熱を込めて講演した。下関で初となる講演会には、市内をはじめ、県内各地、福岡、広島などから約300人が詰めかけ、3時間におよぶ講演に集中して聞き入った。

 

◇  ◇  ◇

 

 冒頭、大西氏は「いまの日本の問題を考えるうえで一番足りないのは現状認識だ。今、私たちの国がどういう状態にあるのかがわからないから、政治もどう対応したらいいのかわからない。世界中で起きている問題も同じだ。みなさんも薄々感じている格差、貧困、戦争、環境破壊、病気……などの大きな問題の中心には必ずお金が絡んでいる。問題の本質に迫れば必ずお金の問題につきあたる。だが、これについて日本だけでなく世界中のどの政党も誰もいわない。政治に必要な根本的な思想と哲学を失っている。その根本原因であるお金の発行の仕組みを伝えたい。この仕組みを変えることにこそ世界の希望がある」という問題意識で政治団体を立ち上げ、2011年から執筆や言論活動をはじめたことを明かした。

 


 そして、自身の考え方が大きく変化した事柄として、神奈川県内の「底辺校」といわれる高校ではじめた校内カフェのとりくみを紹介。ボランティアがかかわって開設した校内カフェには、さまざまな困難を抱えた子どもたちが訪れる。金髪や茶髪は当たり前で、顔や体中に自分でピアスの穴を開けていたり、「単純にお金がないという理由だけでなく、自傷行為も入っている。リストカットの傷を持つ子も多く、“自分なんて生きていたってしょうがない”という声もよく聞かれる。そんな子どもたちが昼休みになると、カフェに置かれたお菓子やジュースめがけて200人くらいが殺到する。よく聞いてみると、前日の晩からなにも食べていない、なにも食事を持って来ていないという。糖分補給のために来ているのだ」と子どもたちの窮状を伝えた。


 「感性豊かで多くの可能性を秘めている子どもたちが居場所を失い、社会的に排除され、その才能を開花させることなく命を失ってしまうケースも多多ある。これは単純に親や学校や地域の大人たちの問題として片付けられるものではない。大人たちも現在の金融経済の仕組みのなかで競争を煽られ、みんな必死になり、余裕を失っている。優しさを失った社会のなかで、子どもなどの弱者がみずから命を絶ってしまうような悲劇があちこちで起きている。


 格差が拡大するなかで社会のクラス化が進み、学校も進学校と問題校に分かれ、頑張れば報われた世代からは“頑張りが足りない”“自己責任”“相対的貧困であって食べていくのには困ってないでしょ”と語られることが多い。だが、そもそも“生きていても仕方がない”という根本的な自己肯定感が欠けている子どもたちに“自分のために頑張れ”といっても説得力がない。貧困が親から子へ連鎖するのは、単純にお金が無いからではなく、根本的な自己肯定感を得られる環境になかったことがある。どんな家庭に生まれたとしても最低限の自己肯定感が得られ、頑張って挽回できるところまで引き上げなければ解決しない」と指摘した。

 

 貧困は子どもたちの問題に限らない。大人でも病気、ケガ、失業、離婚、災害などをきっかけにしてたちまち貧困に突き落とされる。

 

 大西氏は、東日本大震災被災地でのボランティアの経験から、多くの被災者が家を失い、生き残った人たちが多額の負債で生活が立て直せていない現状に触れ、「これは震災問題ではなく、震災を入口にした巨大な経済・金融問題だ。まったく別の理由でも運悪く不利な立場になったとたんに同じ境遇に陥る。高齢者の貧困を見ても、どんどん年金が削られ、病気やケガになっても誰も助けてくれない。まるで網の目からこぼれ落ちるように孤独死や自死に追い込まれていく。私は金融システムのど真ん中で働いてきたので、いまの金融システム、資本主義の仕組みがいかに冷淡で格差拡大的であるかをこの目で見てきた。お金はもうかるところにしかいかない。いくら困っている人を助けてももうからないから民間からお金は流れない。そして命を救うべき行政(国)は、“財源がない”といって手を差しのべない。だがお金の仕組みを知れば、まったくおかしな理屈だ。政治家や官僚よりも、その外側で生きている多くの人たちの方が、すでにそのおかしさに気がついているし、その数は日に日に増大していることを実感している。隠されてきた真実を知る人が増していけば、必ず現在の政治を総とっかえする時が到来する。これは歴史の必然だ」と力をこめた。

 

受け取れなくなった労働の対価  国内外で二重の搾取

 

 また大西氏は、「お金に支配された社会からどんな社会を目指すべきか? それは個人の心の自由、つまり一人一人の人生そのものである自分の時間と労働力を本当に意味あるもののために使うことができる社会だと思う。だが現在の社会は、働いて金をいかに稼ぐかを中心に回っている。昔と比べてはるかに生産力が増し、生産が効率化しているのに、人人の生活に余裕ができるどころか、金を稼ぐために昔以上にキリキリ舞いさせられ、時間的にも体力的にも限界まで働いている。富(お金)を所有している人間に従い、その仕事に意味を感じなくても、ただ金を稼ぐために人生(時間と労働力)を浪費させられる。それが果たして社会を形づくる思想・哲学・価値観であっていいのか? 金融経済の仕組みを根こそぎ変えるためには、この現在当たり前とされている思い込みが間違いであることを知ることからはじまる」とのべ、現在の日本社会が置かれている現状を以下のように解説した。

 


 現在「国の借金900兆円、一人あたり900万円」と宣伝される日本だが、それは政府の借金であって国民の借金ではない。日本国は政府だけでできているのではなく、政府と民間の二つで構成されている。900兆円の借金を政府に貸しているのは、ほとんどが民間(国民)であり、国内でいえば「借金=資産」という相殺関係にある。

 


 さらに日本全体でみれば、対外純資産(外国への貸付から借金を差し引いた額)は341兆円(2018年度)の黒字をもっている【表①参照】。圧倒的に貸している金額が大きい世界一の金持ち国だ。逆に米国はマイナス1076兆円で、圧倒的に借りている金額が大きい世界一の借金大国だ。トランプのディール外交は、この巨額の赤字を消すために世界中に米国製品を売りつけるもので、「資産を持つ従順な国」になんでもかんでも押しつける。オスプレイ、F35、GMO(遺伝子組み換え)食品、詐欺まがいの金融商品、高額な医薬品…そして山盛りのトウモロコシ。同じことを、純資産国3位の中国に仕掛けているのが米中貿易摩擦だ。


 日本が対外純資産を膨らませたのは輸出主導型の経済政策の結果だが、国際決済はドルであるため、輸入はドルで支払い、輸出の対価もドルで受けとる。つまり日本の対外資産である341兆円の実体は3兆㌦の外貨だ。米国の借金も、実際には10兆㌦の借金であり、それを貸しているのが日本をはじめとする黒字国だ。つまり、日本が稼いだ3兆㌦は日本に入ってくることなく、米国の銀行に貯まり続けて米国内で循環している。日本が世界一の資産国であることをみなさんが実感できないのはそのためだ。


 もう一つは、1㌦=360円だった円/ドルの為替相場を変動相場制にし、さらに1985年の「プラザ合意(主要5カ国による協調行動への合意)」を境に米国から円高を強いられ、1㌦=250円から1㌦=120円にまで急激な円高が進んだことにある【グラフ②参照】。日本の悲劇はここからはじまったといっても過言ではない。

 

  

 これまで海外で1㌦で売れていたものが2㌦になる。日本の輸出製品の値段が倍に跳ね上がって海外で売れなくなるため、企業はこぞってコストカットを叫び、輸出製品の値下げを進めた。労働者の給料を削り、サービス残業という「奉仕」が横行した。みなさんに労働の対価を払わないことで海外で安く売ることができ、その結果として膨大な黒字を稼いだ。つまり日本の3兆㌦の対外純資産はみなさんが身を削ったタダ働きによって得たものだ。


 日銀データで日本のマネーストック(現金・預貯金の総額)を見ると、1980年の200兆円から2018年の1000兆円へと右肩上がりに800兆円(約5倍)も増えているが、みなさんが受けとれる給料の金額は20年間ほぼ変わっていない。この間に大手企業は460兆円といわれる内部留保金を蓄えた。給料を払わず、下請への支払いを削り、法人税が安いから溜まり続ける。対外純資産の341兆円は海外に貸し出し、460兆円は内部留保にとられ、二重に搾取されているのだから豊かさが実感できるわけがない。


 そして昔は、消費者・従業員・経営者に優しい「三方よし」といわれた日本の企業も、小泉・竹中内閣あたりから「株主のもの」という明確な定義づけがされはじめた。国家経営から哲学や思想が失われた結果、残ったものはカネだけ。お金に支配された殺伐とした社会と一部による富の独占だ。


 現在の政府が目標に掲げる「GDP(国内総生産)600兆円」「一億総活躍社会」というのも社会の豊かさには繋がらない。GDPとは消費+政府支出+投資+純輸出だ。いくら純輸出が増えたところで国内には還元されず、消費(内需)が冷え込んでいても、政府が赤字を垂れ流しながら支出を削らなければ数値としてのGDPは維持できる。みなさんが自分の時間や労働力を自由に使える、つまり消費が活発になったことをまったく意味しない。


 東京五輪でいくら海外からのインバウンドの客が増えても、外貨(ドル)が落ちるだけで輸出と同じ。TPPでたとえ輸出を伸ばしても稼ぎは海外に貸しっぱなしになり、みなさんの豊かさとは関係がない。それはこの30年間で証明されている。私の持論としては、政府が一人100万円を全国民に配り、生活に余裕をとり戻し、消費を活発にする。たとえ貿易収支が赤字になってもいいし、むしろ赤字にしなければいけない。黒字は使わなければ意味がなく、黒字を使う唯一の方法は赤字にすることだからだ。これはバラ撒き政策ではない。一人100万円を1億3000万人に配っても130兆円。みなさんが受けとっていないタダ働き分の3分の1に過ぎない。「黒字還付金」だ。

 

借金でお金増す仕組み 巨大なイスとりゲーム

 

 次に大西氏は「お金の仕組みをみんなが理解すれば、現在の国家経営や財政政策がいかに支離滅裂なものであるかがわかる」とのべ、そのメカニズムを説明した。


 2018年時点の日本のマネーストック(現金・預貯金)は1000兆円にのぼるが、実際に現金(紙幣や貨幣)として存在するのは100兆円程度しかない。ほとんどが預金(数字)なのだ。お金は「日本銀行券」だが、日銀が民間の預金を増やすわけではない。「では、どうやって増えているのか?」――それが現代のお金発行の仕組み【図③参照】だ。

 

    

 A銀行に100万円のお金を預けると、A銀行はその1%(預金準備率)を日銀に預け、その顧客の預金口座に100万円という金額を書き込む。そして、銀行は残った99万円を元手にもうけるために運用(貸付)に回す。すると、その99万円を借りた誰かが送金したB銀行の口座にも金額が書き込まれ、またその1%を日銀に預ける。残ったお金が誰かに貸し出され、さらに別のC銀行の口座に振り込まれると、実際には100万円しか存在しなかったはずのお金が三つの銀行と日銀の口座をあわせると約300万円に増える。


 「このように貸し借りをくり返しながら銀行間の循環を続けるうちに100万円が数字上で1億円(100倍)にまで膨らんでいく。これが『信用創造』という現代のお金発行の仕組みだ。つまりほとんどのお金を借金で作っているので、借金を返すと同時にお金が消える。みんながお金を返したら成り立たない仕組みであり、お金を増やすためには誰かが返した分、誰かが借金をしなければならない巨大な自転車操業のシステムなのだ」と解説した。


 そのため借金には必ず利息が発生する。金利5%ならば、100万円借りたら105万円を返さなければならない。限られた圏内でみんなが借金を返済するためにはお金が足りなくなるため、さらに外へ外へと果てしなく借金をする人たちを増やさなければならず、その結果世界が「巨大なイスとりゲーム」と化していることをのべた。


 そして日銀のデータ【グラフ④参照】をもとに、日本国内のマネーストック(現金・預貯金の総額)は、90年代初頭までは民間銀行の貸し出し(民間の借金)によって増えていったが、バブル崩壊による信用収縮で民間銀行は貸し渋り・貸しはがしをはじめたため、それにかわって国債(政府の借金)に依存して増えていることを指摘した。

 

       

 グラフを見ると、国内の現金・預貯金の総額であるマネーストックM2(太い実線)が、90年代はじめまでは民間銀行貸出(青い線)と並行して増えていくが、バブル崩壊後の2000年以降は国債残高(赤い線)と並行して増えていることがわかる。毎年、政府が赤字国債を刷って民間銀行に買わせている関係であるため、それを一部の人間が独占していたとしても「政府の借金=民間の預貯金」であり、政府の借金900兆円を民間から集めた税金で返してしまえば政府の赤字はなくなるが、国内から同額のお金(ほぼすべての現金・預貯金)が消えることを意味している。

 

 

 「世界広しといえども永遠に借金を続けられる民間企業などない。人口は限られているのに、経済成長が永遠に続くわけがない。借金が増え続けるということは一円も負債を返済していないということであり、1円も返済せずに銀行から借金できるのは政府しかいない。だが返してしまえば経済が破綻する。そもそも未来永劫返さないものを『借金』と呼ぶ意味すらない。完全に論理破綻している」とのべ、最近、米国などで提唱されているMMT(現代貨幣理論)は、自国の通貨発行権を持つ政府は赤字国債(借金)で予算を組むことができるこの仕組みを解説したものであることを説明した。


 だが、この政府の借金には、毎年9兆円、この30年で300兆円以上もの利息が累積している。利息とは、お金持ちがお金をもっているというだけで、時間とともにお金が入ってくるという仕組みだ。その利息は、国債を買い込んでいる機関投資家(民間銀行や保険会社など)が受けとっている。そのため時間がたてばたつほど、貧困者から金持ちへの富の移転が進み、国内の格差はどんどん拡大していく。


 その解決策として大西氏は、「まだ世界にお金が必要である以上は、税金や赤字国債ではなく、新たな政府通貨として1兆円紙幣を900枚発行して日銀に預け、日銀が民間銀行にある900兆円分の国債を買いとればいい。すでにアベノミクスの金融緩和で半分もの国債を買いとっているがインフレもなにも起きていない。知らない人もいるくらいだ。すべて買いとってしまえば、同じ日銀の金庫の中に、政府から預かった900兆円(政府通貨)と政府に貸している900兆円(国債)が存在することになり、両者が相殺される。すべて数字上の話であり、おそらくみなさんには蝶が羽ばたいたくらいの感覚しかないだろうが、このバタフライ・エフェクトによって年間9兆円もの膨大な利息を生んでいた巨大な格差拡大マシーンが停止する。国債から利息を稼いでいた銀行は青息吐息になるだろうが、社会全体からみれば後に劇的な変化を生む。皆さんが知らず知らずのうちに奪われつづけてきた膨大な時間とお金をとり戻すことができる」との持論を展開した。

 

人の労力と時間が国の資産 税制と国家予算の本質

 

 また「国家経営において“税金を集めなければ使えるお金がない”という発想は、税を年貢米で納めていた時代のものだ。コメは集めなければ使えない。だが、お金とはそもそも無だ。すべて借金で作り出している。現に日本の国家予算はこの50年間毎年赤字だ。その気になれば、無税国家にしてすべて政府の借金でお金を作って回すことも可能であることを証明している」としたうえで、「ただ税制には、国の形をつくるという大事な意義がある」と強調した。


 現在の累進課税には「所得の再配分」、相続税には「所得格差の是正」という思想が反映されており、「みなさんが望む社会のあり方に従って国の形を作っていく。それが本来の税制の役割であり、政治の本質だ」とのべた。


 現在は所得税の最高税率が45%であるのに対して、株や為替取引など金融取引で得た1億円以を稼ぐ投資家の所得は分離課税(17%程度)で優遇され、なんの価値も生み出さず他人の富を奪うギャンブルを国が奨励している。「この金融取引で得た所得に高税率をかけられると投資家は飛び上がるが、“どうせ働くならこの世に価値を生み出して下さい。それが私たちが望む国の形だ”という明確なメッセージを与えることになる。日本は世界一お金を貸している国であり、外国人投資家など本当は必要ないのだ。だが私たちは外国人投資家を追い出す前に在日米軍を追い出さなければそれを実現できないだろう。その覚悟を持って政治家と政党を選んでいくことが必要だ」とのべた。

 

 国家予算についても「お金は紙切れであり、経済の中を数字がぐるぐる回るだけで消えることはない。それ自体は何の価値も生み出さない。本来の国家の財産とは、人間の時間と労力、そして環境資源だ。これが実体価値を生み出す源泉で、使ってしまうと二度と返ってこない。これを有効に使うことこそが国家経営であり、その価値を作り出すためならばお金はいくらでも作ることができる。だが現在は、教育や介護にしても、必要としている人がいて、働きたい若者もいるのに、そこにお金が注がれないために価値を生み出せない本末転倒な状態に置かれている。電気、水道から鉄道や道路をはじめ社会全体にとって必要不可欠な公共インフラの民営化、消費税、カジノ解禁など、社会にとってなんの価値もない金もうけのために人の時間と労力が無駄に使われる。これこそが国家にとってのコストだ。お金で考えるから論理が逆転するのだ」と指摘した。

 

本質を知り動き出した世界 進む価値観の転換

 

 最後に大西氏は、「この30年間、日本は明確な方向性を失ってきた。戦後復興という大きな目標を成し遂げた後、何のために生き、働くのかさえわからないまま、ひたすら目先の利益や売上のために働き続けてきたが、それがすでに社会の豊かさとはかけ離れたものになっていることを誰もが薄々気がついている。大人がそうであれば、それを見ている子どもたちは余計にわけが分からない。奨学金という借金を抱えて社会に放り出され、ただ“売れ、売れ”といわれるが、それに価値があることすら感じられず、生きる意義を見いだせない。だからこそ10代~30代の若者の死因のトップが自殺というような歪な社会になっている。私たちは、ただ金を稼ぐために働くという目的から、よりよい社会を作るために時間と労働力を使うことを明確にし、日本から新しい国づくりをはじめることを提案したい。そのためには、この狂気と化した金融経済を変えるための指針を示す国家経営をする政治家を作り出さなければならない」と強調し、以下のように続けた。


 そもそも経済とは、価値の生産と交換だ。みんなに必要なものを作るからこそ交換できる。だが、今は必要ないものを無理矢理作って売る。お金をもらうための経済だからだ。それは金融の仕組みが、誰かの借金で成り立っている巨大なイス取りゲームだからだ。売ったものが社会にとって必要か、不必要かすら判断できなくなっている。


 経済の専門家も政治家も、お金を「あるもの」として考え、コストも人間が効率的にカネをもうけられることを基準にしか考えない。その他の多くの人の方が本質に気がつき、疑問に感じているはずだ。


 価値とは、人が必要とするモノやサービスなどの実体そのものであり、それを交換するためのお金はその量に見合うだけあればよく、金利や借金で増え続ける必要などない。限られている実体価値以上にお金が増え続ける、つまり同じだけの借金が増え続けた結果、みんながそれに課せられた金利を返すために熾烈な競争社会になり、誰かを蹴落とさなければ生きていけない経済のシステムになっている。この問題を解決しなければ、貧困や格差、戦争、病気などあらゆる社会の問題は絶対に解決しない。みんなが仲良く共存できない世界をこの金融システムが作っている。

 

 この金融資本主義の仕組みを根こそぎ変えることは、世界中の政治家にとって最大の政治命題だ。すでに地球も社会も維持できないところまで来ており、歴史の必然として地球規模の大転換がそこまで迫っている。


 そのためにはまったく新しい次元の新しい政党をつくる必要があり、れいわ新選組はその大転換の動きが生み出したものだ。米国大統領選でサンダース旋風が起きたのも地球規模で始まった自浄作用といえる。人間の意識は地球を壊滅させることもできるが、それを立て直すこともできるすごい力を持っている。既成の政治勢力の外側から新しい社会を目指す勢力が生まれている。名前がなんであれ、代表が誰であれ、この考え方が新しい時代を作っていくことを断言できる。

 

れいわ新選組の街頭演説に集まった人々(7月、東京)

 だが単純にそのような政党が政権をとっただけで世界が変わるほど甘いものではない。かつて政権を失った民主党がそうだったように、われわれ自身が大して変化していないからだ。お金の発行の仕組みは、世界中の経済の仕組みを変えなければならず、みんなが是が非でもという強い熱意をもってそれを求めなければ変わらない。一人一人が、世界を狂わしているお金に従って動いていくなら、狂った社会はなにも変わらない。


 大事なのはみんなの頭の中だ。みんながお金よりも大事なものに気がついて、少しずつ自分の判断を変えていくのなら、その数が増えるだけ社会にものすごい変化を起こしていく。その先に政権を取る事業があり、日本が変わればその影響は世界に計り知れない変化をもたらすことになる。


 所有という概念も人間が作り出した意識にすぎず、自然界にあるものは人間を含めたすべての生き物の共有物だ。支配という概念も、株主(資本家)のいうことを聞かなければいけないという意識も、この社会であたりまえとされて信じ込まされているだけの観念であり、真理でもなんでもないことに気がつくことができる。お金も紙切れにすぎず、それそのものに何の価値もない。ないもの(カネ)に縛られてあるものを歪めていくのか、あるもの(時間と労働力)を使って新しい世界を創造していくのか。それはすべて頭の中から始まり、それぞれが自分の頭で考えて決めていけばいい。


 私の考えでは、よりよい世界を作るためには、まず1人からできることをやる。自分の頭の中だけは誰からも邪魔されないからだ。自分の思い込みが正しいとは限らないのに、たくさんの人を巻き込もうとすれば逆に失敗する。他人と結果はコントロールできないが、自分が1段の階段を上がることはできる。それをみんなが始めたら社会は大きく変わっていく。


 私の場合は、2011年時点で、世界は変わり始めたし、すでに変わったと直感した。だから、私はその変わった世界と、みなさんの頭の中に漠然と起きている変化を整頓して言語化していくことによって、それを皆さんが意識するようになると思った。だから本を書いたり、動画を作ったり、講演会活動を始め、まったく相手にされない時期もあったが、やっているうちにだんだん周りが影響されて耳を傾けてくれる人が増え始めた。


 そして、みなさんから「それは私が思っていたことだ」「それがおかしいと思っていた」「それを求めていた」といわれ始めた。私の言葉であるのに、それを通じてみんながこれまで気がつかなかった自分の心が発していた言葉に気付いていくことができるということを経験してきた。自分をとり巻く世界で起きている現状とその問題を生み出す本質的な原因に気がついたとき、人は自分の本当の声を聞くことができるのだと感じた。自由を奪ってきた思い込みや既成概念が取り払われると、自分にとって本当に大切なものが見えてきて自然とワクワクしてくる。


 そこで私が次にみなさんに期待するのは、突き放すようだが「勝手にしてくれ」だ。自分の声を聞いたのなら、自分がやりたいことや望む生き方がはっきりする。それに向かって自分のペースで動いていけばいい。よいことをしようとするなら「利己的になって焦らない」のが大切だ。主観的に結果や他人をコントロールしようと思えば、それはエゴにしかならない。


 他者に対しては、愛して信じて待つ。自分の信念に従ってまず自分を変える。自分だからこそできることがあるし、自分が変わるから他者に影響を与えることができる。そのようにしてしか世界は変わらないし、それが世界を変える大きな鍵だと思っている。

 

 

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おおにし・つねき

東京都荒川区出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。シアトル大学政治科学専攻。J.P.モルガン銀行で資金部為替ディーラー、バンカース・トラスト銀行で為替、債権、株式先物トレーディングを担当。株式会社インフォマニア代表取締役。政治団体フェア党代表。2019年7月、れいわ新選組候補者として参院選に出馬。

 

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