いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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時代は変わる The Times They Are a-Changin  国際教育総合文化研究所 寺島隆吉

 てらしま・たかよし 1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史科哲学)卒業。元岐阜大学教育学部(英語教育講座)教授。現在、国際教育総合文化研究所所長。著書に『英語で大学が亡びるとき』『英語教育が亡びるとき』『英語教育原論』(以上、明石書店)、訳書に『チョムスキーの「教育論」』『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(以上、明石書店)など多数。
 
 
 有名なロック歌手ボブ・ディランの歌「時代は変わる The Times They Are a-Changin」が若者に歌い継がれ、広まっていった時期があります。アメリカ全土で公民権運動や反戦運動が激しく闘われていた1960年代です。
 それと同じく、最近の世界情勢に少しずつ新しい風が吹き始めたように思います。まさに「時代は変わりつつある」のです。
 というのは、2015年9月27日のカタロニア自治州議会選挙で、独立賛成派が勝利しました。これを受け、スペインのカタロニアとイギリスのスコットランドの分離・独立運動は新たな局面に入ろうとしているからです。
 かつて私はブログ「百々峰だより」で、沖縄の民衆が圧倒的多数で米軍基地の辺野古移転を拒否したにもかかわらず(全選挙区で自民党が敗北)、安倍政権が民衆の意向よりもアメリカの意向を優先する政策を続けるかぎり、沖縄にとって残された道は日本からの独立しかなくなる、と書きました。
 カタロニアやスコットランドの動きがさらに勢いを増し、実際に独立するようなことになれば、それに勢いを得て、沖縄の独立運動はさらに現実味を帯びてくるでしょう。というのは安倍政権は憲法を踏みにじって戦争法案を強行採決しましたが、その結果まっさきに犠牲になるのは沖縄人と自衛隊員の命だからです。
 もう一つの理由は、「中国封じ込め」という戦略のなかでアメリカがまず第一に頭に描いている戦場は尖閣列島や南沙諸島だからです。そして中国との間で実際に戦争が始まった場合、まっさきに出動基地となるのが沖縄であり、まっさきに出動を命じられるのは米軍ではなく自衛隊だからです。
 
 
 私の家は岐阜市内にありますが自衛隊各務原基地が近くにあります。ところが機密保護法案が国会の話題になり始めた頃から自宅の上空で戦闘機の爆音が急に強くなり始め、さらに戦争法案が話題になり始めた頃から戦闘機の大編隊が轟音を立てて何度も上空を行き来するようになりました。
 これは明らかに戦争が近くなっている証拠であるように思います。さもなければ、このようにひっきりなしの戦闘訓練をする理由がないからです。かつてアメリカは「トンキン湾事件」という謀略事件を起こして本格的にベトナム戦争へと突入しました。日本も中国本土で盧溝橋事件や満州事変などの謀略事件を起こして戦争に入っていきました。このように軍部・為政者にとって戦争はいとも簡単に引き起こせるものなのです。
 そして、いったん戦争がおきてしまえば大手メディアは一斉に敵を悪魔化して戦争賛美へと流れていきます。逆にそれに異を唱える人たちには「非国民」のレッテルを貼りますから、始まってしまった戦争を押しとどめることは極めて困難になります。それは、アメリカ全体が「9・11事件」のあと一斉にアフガニスタン戦争さらにはイラク戦争へと流れていった経過をみれば、歴然としています。ABC放送もニューヨークタイムズも戦争賛美一色になりました。
 ですから、日本でもアメリカでも尖閣列島や南沙諸島の問題を口実に戦争を起こしたいと思っているひとたちは、どこかで必ず謀略事件を起こすに違いないと私は思っています。
 
 
 イラク戦争の場合も、いま起きているシリア内戦の場合も、いったい幾つの嘘がばらまかれてきたでしょうか。欧米のメディアはシリアのアサド大統領が化学兵器を使って自国民を殺しているという嘘をつきながらシリア爆撃の口実にしようとしましたがロシアによってその嘘が暴かれて攻撃の口実を失い、今度は自分たちが育て上げたイスラム原理主義集団「イスラム国(IS)」の人権問題や古代遺跡の破壊を口実にしながらアサド政権転覆を画策しています。
 しかも、アメリカとNATO諸国による中東地域の破壊は、アフガニスタン→イラク→リビア→シリア→イエメンといったふうに、とどまるところを知りません。2001年から始まったアフガニスタン戦争についても、その国土を破壊し尽くしているのに未だに休戦・停戦の道筋はまったく見えていません。これは中東全体についても言えることです。
 このなかで、どれだけの死者と難民が生まれたでしょうか。このような破壊と殺戮の「パンドラの箱」を開けることになった張本人、元イギリス首相ブレア氏と元アメリカ大統領ブッシュ氏は、戦争犯罪人として裁かれたでしょうか。今もサウジアラビアなどのイスラム原理主義=王制独裁国家を支援しながら戦乱拡大の役割を果たしているオバマ大統領にたいして、戦犯としての告発を、欧米の大手メディアのどこかが、今までに発したことがあるでしょうか。
 というのは、これらの王制独裁国家およびトルコやイスラエルが、アメリカと手をつなぎながら裏でいわゆる「イスラム国」を支援してきたことは今では歴然としているからです。
 
 
 それが目に見えるかたちではっきりと姿を現したのがイギリスにおける労働党の党首選挙でした。この党首選挙では、労働党の最左派と言われ今まで泡沫候補として誰も相手にしていなかったコービン氏が、圧倒的多数で党首に選ばれることになったからです。大手メディアは「コービン氏が党首に選ばれる確率は200分の1だ」と言っていましたが、その奇蹟が実現したのです。
 これはイギリス民衆が、ブレア氏に代表される今までの労働党の路線、規制緩和と民営化を追い求める財界寄りの路線、嘘をついてまでもアメリカの戦争政策に追随する労働党の路線に、いかに嫌気がさしているかを如実に示すものでした。
 そして今までのブレア路線がいやになって労働党をやめていたひとの多くが労働党に戻り始め、今や党員はかつての2倍=40万人に達するまでになりました。(しかし他方でBBCを初めとする大手メディアは、コービン氏を過激派分子であるかのようなレッテルを貼り、新しい「悪魔化」、新しい「コービンたたき」を始めています。)
 イギリスのキャメロン首相は、ロシアの空爆が「イスラム国」を追い詰めていることに焦りを感じ、議会にシリア空爆への許可を求め、労働党の一部が寝返ったおかげで賛成を得ました。
 しかし寝返った労働党の議員はブレア氏が首相だったときに議員になったいわゆる「ブレアチルドレン」です。だから賛成にまわるのも当然だとも言えるわけですが、シリア空爆はシリア政府から要請を受けたものでもありませんし、国連の了承を得たものでもありません。
 このような空爆は、シリアの領空権・国家主権を犯すものであり国際法違反であることは明白な事実です。これはシリア政府から正式に要請を受けたロシアの空爆とは本質的に全く異なるものです。ですから、このような空爆の了承は、イギリス政府与党および寝返った労働党議員の知性の堕落をまざまざと示すものになりました。
 だからこそコービン氏が率いる40万の労働党員は、一部の議員が寝返ったにもかかわらず、党首からのメールに応えて、その4分の3(75%)が、空爆にNOを突きつけたのでした。
 
 
 このようにイギリス民衆が目覚め始めたのと同じようにカナダでも変化が起きました。カナダの総選挙でも、アメリカの戦争政策に追随してきたスティーブン・ハーパー首相を、有権者が3期ぶりに政権の座から引きずり降ろしたからです。カナダの新しい首相はさっそくカナダ軍戦闘機を中東からひきあげると発表しました。これは二つの意味があるように思います。
 一つは、イスラム原理主義集団「イスラム国」と戦うと称してアメリカやイギリスが主権国家シリアの許可なく勝手にシリア領内を爆撃しても「イスラム国」の領土は縮小するどころか拡大する一方だったからです。ところが選挙で選ばれたアサド大統領の要請で、ロシアが「イスラム国」の軍事拠点を攻撃し始めたら、アメリカやNATO諸国が1年かけても達成できなかった成果を1週間で達成してしまったからです。
 だからこそロシアの民間機や戦闘機が爆破されたり撃ち落とされたりしたのでしょう。しかも「イスラム国」の大きな資金源のひとつがトルコとの原油密貿易であり、それを見ないふりをしていたのがアメリカであったことが、ロシアによって暴露されてしまいました。これは今までは公然の秘密だったのですが、それが白日の下にさらけ出されてしまったのです。
 このことは、「イスラム国」と戦うと言いながら、アメリカの真のねらいがアサド政権の転覆にあったことを改めて裏付けるものでした。これはアラブの民衆にとっては自明の事実でしたが、それがカナダの民衆にも分かり始めたということを、カナダの総選挙は示すものでした。しかも、内戦状態にある主権国家を国家元首の了解や要請なしに他国が勝手に爆撃するなどという行為は(国連決議があるのであれば別ですが)国際法を露骨に踏みにじるものであり、これもカナダの民衆にとっては許せないことだったのでしょう。
 
 
 同じことは、実はアメリカでも起きています。いまアメリカでは新しい大統領を選ぶための予備選が激しさを増しています。ところがここにも異変が起きています。というのは社会主義者を自認するサンダース氏が、無所属ではなく民主党の候補者として立候補し、民主党の目玉と目されているヒラリー・クリントン女史と互角の闘いを演じているからです。世論調査ではヒラリー女史を超える支持率を得ている州も少なくありません。
 しかもサンダース氏は財界からの献金は拒否するという姿勢を強固に貫いているにもかかわらず、氏のもとに集まる献金はヒラリー女史が財界から集めた金額に迫る勢いだそうです。これもアメリカの民衆が、ブレア氏と同じような「財界寄りの規制緩和と民営化」を推し進める民主党とヒラリー女史の路線に、嫌気を感じていることを如実に示すものです。ブレア氏が労働党の党首でありながら民衆・労働者の要求を踏みにじってきたことへの不満・怒りは、アメリカ民衆の、民主党への不満・怒りでもあったわけです。
 
 
 サンダース氏とヒラリー女史の動きで、もうひとつ面白い現象が起きています。それはTPPをめぐるものです。
 TPPには、国家が国民の生命・健康・生活を守るために企業活動に規制をかける法律を作った場合、自分の利益に反する規制だという理由で企業が国家を訴える権利をもてるようにする条項が含まれています。巨大企業が国家主権を乗り越えてしまうという恐ろしいものです。だからこそ、今まで交渉内容をひたすら秘密にしてきたのでした。
 これに真っ向から反対しているのがサンダース氏です。しかも民主党の党員にも、このようなTPPに反対する議員は少なくありませんでした。ですから、「TPPについては一括して大統領に任す」という法案を通すために、オバマ大統領は、皮肉なことに共和党の議員に頼らざるを得ませんでした。
 ところがウィキリークスなどを通じて、TPPの内容がいかに巨大企業の利益だけを優先し民衆の利益を踏みにじるものであるかが暴露されてきているので、今ではヒラリー女史でさえ、予備選挙でサンダース氏を打ち負かし民主党の支持を取り付けるためにTPP反対を言わざるを得ないように追い込まれています。
 さらに、もっと興味深いのは、共和党の大統領候補者として予備選で最先端を走っていると言われているトランプ氏までが、最近はTPP反対を言い始めていることです。彼の言い分は「外国の大企業がアメリカの政府を訴えることができるような貿易協定は許すわけにはいかない」というものです。トランプ氏にとっては、世界の覇者であるアメリカ、覇権国家アメリカが、他国の企業から告訴されることなど許しがたいというわけです。
 しかも、さらに重要なことは、上記のような事情でオバマ氏は、「TPPについては一括して大統領に任す」という法案を議会で通すために、共和党に頼らざるを得なかったのですが、それにもかかわらず、たった五票の僅差で、かろうじて賛成に漕ぎつけたのでした。
 ですからTPPの全容が公開されてその問題点が暴露されれば、これが議会を通過するかどうかは、いまだ全く未知数です。
 というのは、上記の一括委任法案に賛成した議員五人が「こんな民衆無視・大企業優遇の法案は我々の求めていたものではない」と言い出せばTPP法案は終わりを告げるからです。

 
 このように、この法案はアメリカ国内においてさえ、「大筋合意」に達していないのです。ところが日本は、戦争法案に疑問を呈した朝日新聞や毎日新聞ですら、あたかもTPPは既成事実であるかのような論調です。それどころか「TPPが流れずに何とか妥結して良かった」という論調すら見られます。
 先述のとおりアメリカでさえ、いまだTPPの行方は流動的なのに、我が日本ではTPP推進論が主流なのですから、言うべきことばを失ってしまいます。
 しかも安倍晋三氏は、アメリカ議会で演説したとき、TPPは単なる経済協定ではなく中国封じ込めのための軍事協定であり、日本はその協定実現のために先頭に立って奮闘すると述べ、満場の拍手を得ているのです。
 だとすれば、戦争法案に疑問を呈してきた大手メディアは、TPPにたいしても鋭い疑問を提起すべきでしょう。単に農産物の自由化だけを問題にするのではなく、国家主権など論ずべき問題は数多く残されているのですから。
 ところがNHKを初めとしてメディア全体が右傾化しているので、ISD条項などによる国家主権の侵害はもちろんのこと、TPPと中国封じ込めの問題、TPPで日本の医療が崩壊するかも知れないという問題、「非親告罪」をめぐる言論の自由などは、ほとんど議論になっていません。
 あれほど戦争法案が話題になり、国会包囲のデモが繰り返しおこなわれたにもかかわらず、与党が平然としていられる背景には、このような事情があるように私には見受けられます。
 
 
 ところで、AP通信によると、2015年9月14日、沖縄県の翁長(おなが)知事はアメリカ軍普天間基地の移設先である名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消す方針を表明しました。
 しかし翁長知事がこのような表明をしたことについて、アメリカ政府は同日、辺野古への移設を進める立場に変わりがないことを改めて強調しました。
 このアメリカ政府の姿勢は、「人権擁護」「民主主義擁護」を口実に他国への介入・政権転覆を繰りかえしてきたオバマ政権の偽善性を改めて浮き彫りにしたように思います。同時にそれは安倍政権の「民衆蔑視」「対米追従」ぶりを鮮やかに示すことにもなりました。
 というのは、「人権無視」「環境破壊」をもたらす基地移転にたいして沖縄の圧倒的多数が、度重なる選挙を通じて、拒否の姿勢を明確に表明しているからです。
 ところが、翁長知事が政府による移転工事に差し止めを命じたのにたいして、今度は国の一行政機関にすぎない沖縄防衛局が、自らを「私人」であると主張して、行政不服審査法にもとづいて審査請求をおこなうにいたっています。
 もし安倍政権とアメリカ政府がこのような民意無視の姿勢をとり続けるならば、先にも述べたように、沖縄は独立を宣言せざるを得なくなるかも知れません。世界を見渡すと各地に独立を目指す動きが活発化しているからです。
 
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 先述のとおり、イギリスでもスコットランドの圧倒的多数が独立を目指して運動していますし、スペインでも140万人を超えるカタロニアの人々が独立をめざす巨大な集会を開き、バルセロナ市内を埋め尽くしました。
(時間のある方は下記動画もぜひ御覧ください)
Gateway to Catalan Republic: 1.4 million rally for independence in Barcelona 
http://www.rt.com/news/315070-catalan-independence-rally-barcelona/

 欧州では、このようにスコットランド、バルセロナ、そしてイタリアではベニスの独立運動がすすんでいるだけでなく、先にも紹介したように、イギリスの議会政治においても、大きな変化が起きています。
 党内最左派の人物、「鉄道の再国有化、教育費の無償化、シリアへの内政干渉反対」などを政策として掲げてきたコービン氏が、イギリス労働党の党首として選ばれたからです。
 こうして、労働党の結党理念である社会主義に立ちかえるよう堂々と主張する人物が、党首に選ばれ、それを契機に復党するものが激増し今や党員数が40万人になったことは既に述べたとおりです。このようにイギリス民衆の意識は確実に変わりつつあるのです。
 また、これもすでに紹介したことですが、アメリカでも、社会主義者を自称するサンダース氏が民主党から大統領選に立候補し、各地の世論調査でヒラリー・クリントンを追い抜く勢いで快進撃を続けています。
 このようにイギリスでもアメリカでも、民衆の意識は確実に前進しつつあるのです。
 さらに、もう一つの新しい動きは、アメリカ追従の姿勢をとり続けてきたオーストラリアのアボット首相が、党内の党首選で敗北し、辞任に追い込まれたことです。安倍晋三首相を「最高の友人」と呼んで日豪の蜜月関係を築いてきた人物が敗北したのです。
 このように世界は変わり始めています。つまり、いま世界中の民衆が、財界寄りの権力政党・権力政治家にトコトン嫌気がさしているのです。
 ですから、何度も言いますが、もし安倍政権とアメリカ政府がこのような民意無視と自然破壊の姿勢をとり続けるならば、沖縄は独立を宣言せざるを得なくなるかも知れません。しかも世界の世論は多分それを支持するでしょう。今や沖縄とフクシマは世界中で注目の的になっているからです。
 その証拠に、沖縄県民の圧倒的多数の声を踏みにじるアメリカ政府とそれに服従するだけの日本政府にたいして、映画監督オリーバー・ストーン氏や言語学者ノーム・チョムスキーなど著名人109人が、「世界は見ている」と題する声明を発表して、辺野古への米軍基地移設に反対を表明しています。
 辺野古移設反対で声明、オリバー・ストーン監督ら109人(共同通信2015年8月31日)

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 この「世界は見ている」と題する声明が最初に発表されたのは2015年8月22日でした。このとき翁長氏を支援する署名者は74名でしたが、賛同者はその後も増え続け、8月31日の時点で、総勢109人にも達したのです。
 これには、平和学の創始者として名高いヨハン・ガルトゥング(ノルウェー)、ベトナム戦争時にいわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した内部告発者ダニエル・エルズバーグ(アメリカ)、北アイルランド問題で1976年のノーベル平和賞を受賞したマイレッド・マグワイア(イギリス)などの諸氏が新たに加わっています。
 まさに沖縄の動向を「世界は固唾をのんで見守っている」のです。ですから、日米両政府の姿勢が変わらない限り、沖縄人の独立への願望はたぶん強まることはあっても弱まることはないでしょう。そのような方向へと日本政府は沖縄県民を追い込んでいるからです。
 だとすると、そのような独立への動きにたいして私たち本土にいる人間はどのような態度をとるべきか―それが重要な課題になるときが日々近づいている。そんな懸念を私は断ち切ることができません。
 しかし、もちろん最善の道は、安倍政権とアメリカが現在の政策を取り下げ変更することですが、これを実現するには欧州を見れば分かるように、巨大な民衆運動といった「下からの動き」以外にありません。
 そのためには正しい情報が伝えられることが最低不可欠の条件です。その点で沖縄では琉球新報や沖縄タイムスといった地方紙が巨大なちからを発揮しています。本土でも地方紙とりわけ長周新聞の果たす役割に期待するゆえんです。

 〈追記〉 フランスでも新しい変化が起きています。フランスの地方選挙の第1回投票が2015年12月6日に実施され、国民戦線(FN)が、本土13州(コルシカ島含む)のうち六州の得票率で首位となったからです。
 今回の結果に「パリ連続襲撃」や「押し寄せる難民」が影響していることは疑いありません。しかし、このテロや難民を生み出した根本原因が中東におけるアメリカやNATO諸国のイラクやリビアにおける政権転覆工作だったことは明らかですから、そのようなアメリカやNATOを批判してきた国民戦線に票が集まることは、ある意味で自然なことでした。
 また経済や社会の諸問題についても、2大政党(サルコジ前大統領が率いる共和党、オランド大統領が所属する社会党)が示す解決策はほとんど見分けがつかないのですから、この点でも国民戦線に期待が集まるのも当然と言えます。
 つまりフランス民衆にとってフランス社会党は、ブレア氏が率いていたイギリス労働党と同じく財界寄りの政策をとり、かつアメリカの意向に逆らえない政党だったからです。
 極右とネオナチを実働部隊としたウクライナの政変についても、それをアメリカが裏で糸を引いたクーデター(政権転覆)だと指摘し、ロシアに対する経済制裁に反対したのも国民戦線(FN)だけでしたから、この点でもFNに民衆の票が集まるのは、また自然のなりゆきでした。
 というのはアメリカの言いなりになってロシアに経済制裁をおこなっても、EUの大きな貿易相手国がロシアでしたから、逆に「ブーメラン効果」で、フランスをはじめとするEUが自ら苦しむことになったからです。
 日本の大手メディアは国民戦線に「極右」というレッテルを貼るだけで、このようなフランスの内情や国民戦線の性格を正確にとらえて報道しませんから、ますます世界の新しい変化が見えなくなるわけです。
 (国民戦線は、フランス地方選挙の第2回投票では社会党と共和党の共闘の前に敗れたものの、2017年大統領選へ向け存在感を高めていることは、何ら変化がありません。むしろ与党社会党の劣勢を逆に印象づけてしまいました。)


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