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国民の生命と財産を守れ ー日本列島を次々と襲う自然災害ー

 猛烈な風と雨を伴った台風21号が大阪はじめとした関西地方を襲い、6日未明には北海道が震度7の巨大地震に見舞われた。列島の各地が自然の猛威によって無惨にも破壊され、無数の国民の暮らしが脅かされている。

 

 もともと地盤沈下が著しかった関西国際空港は高潮で浸かり、一時は8000人が孤立する事態にもなった。アンカーを下ろしていた貨物船が押し流されて連絡橋を破壊し、道路ではトラックが横転。普通自動車をいともたやすく転がすほど危険な風が吹き荒れた。潰れた木造家屋やへし折られた電柱、街路樹など、目にする光景はどれもこの台風の凄まじさを物語った。

 

 北海道の惨状も同じだ。崩れた山肌、隆起する大地や地割れは、この地震の威力がどれだけのものだったのかをあらわした。倒壊した家屋やインフラの復旧には相当の期間を要することが避けられない。全域295万戸が停電するというような事態は前代未聞であり、この完全復旧には1週間を要するという。まだまだ被害の全貌をどれだけ把握できているのかわからないものの、当面の水や食料、広範囲にわたって電気が通電しない被災地の対応に全力を注ぐことが求められている。同時に、家を失った被災者の新たな避難先のことを考えると、時間的余裕などあまりない。冬が到来する前に解決しておかなければ、プレハブの仮設で厳冬を凌(しの)げるわけなどないからだ。さらに酪農家や農家への対応など、国民の胃袋を支えている北海道の第一次産業へもきめ細かな対応をしなければ、TPPや日米FTAよりも先んじて壊滅的打撃を被る事態にもなりかねない。

 

 7月に西日本を襲った豪雨災害に始まり、立て続けに列島各地が甚大な自然災害に見舞われている。広範な地域が激甚災害指定を受けなければならないような事態に直面し、そこで暮らす一人一人の国民の生命や財産、日常生活が脅かされているのである。この同時多発的に起こっている国民の苦難にどう対面するのか、政府なり統治機構の重大な責務が問われている。

 

 海外にばらまくODA(政府開発援助)なり、米軍需産業を喜ばせる武器購入費(来年度の防衛費は過去最高の5兆3000億円規模)、米軍関係費の6000億円、東京五輪経費、金融市場で多国籍企業や投資家が弄んでいる緩和マネー等等を、自然災害に見舞われた国民の「生命と財産を守る」ために振り向け、それこそ存立危機事態に真面目に向き合わなければならない。飛んでも来ないミサイルに備えたり、指一本触れてもこない仮想敵とたたかったり興奮するまえに、目の前の自然災害にまともな対応をすることが現実的かつ急がれる喫緊の課題である。

 

 三陸や熊本では、その後も数万人がプレハブの仮設に押し込められたままである。そして広島や岡山も、北海道もその後を追おうとしている。この国では、地震や津波に襲われるたびに住居を追われた国民が行き場を失い、プレハブ列島化するような異常がまかり通っている。被災者の住宅補助についても微微たるものではなく、真に住宅が再建できる金額へと引き上げること、一人も取り残すことのない災害復旧や復興を実現させることが求められている。

 

 「国民の生命と財産」にどう向き合うのかは、何も戦争だけでなく自然災害でも問われるものだ。前者は外交努力でいかようにも回避できるが、後者は地震、火山噴火がつきものの日本列島で暮らす以上、避けがたいものとしてある。21世紀の先進国にはカネもあれば、住宅建設技術やインフラ復旧のための重機等等もみな揃っている。できることをやらないことに重大な問題がある。

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